2022 Fiscal Year Research-status Report
人口減少社会での新たな経営合理性の模索:条件不利地域での企業の適応行動事例から
Project/Area Number |
22K01656
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
田中 恭子 北星学園大学, 経済学部, 准教授 (10453200)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 条件不利地域 / 企業の環境適応 / 人口減少社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は人口減少,高齢化が進行する環境下での企業の適応行動とその環境要因を明らかにし,条件不利地域での企業行動原理の解明を目指している。人口減少,高齢化の先進地は国内では総務省の指定する条件不利地域として定義される。過疎化が最も進行する島根県内の企業を中心に条件不利地域企業を対象としアンケートとヒアリング調査を実施中である。 今年度は条件不利地域の企業経営に強く影響している外部環境要因を整理し,人口減少による環境要因と特徴を明らかにするためヒアリング調査を実施した。結果として,企業と外部環境は各活動が網羅的に連鎖しているため企業単体での状況悪化という事態に終わらず,地域社会全体として負の連鎖が起きている状況である。また域内循環率が低下していることが人口減少に大きく影響しているため,企業経営とその基盤となる地域全体への対策が必要となっている。人口減少により物流機能が大きく低下し社会インフラの低下が著しい。地域企業を支援する金融機能,行政支援の弱化が条件不利地域での環境要因として特徴的である。 企業調査では需要縮小などの外部環境変化に対する各社の取り組み状況についてヒアリングを行った。需要縮小にともなう業界内統廃合の各時期において,それぞれ業界再編がおこり企業数が減少する。企業数減少に伴って,各社は共同生産体制で生産の集約を狙い稼働率向上,コストダウンを図ることや協同販社設立による共存的行動を展開してきた。一定水準以上の需要縮小が発生するなど外部要因の変化を契機に,業界で危機感が共通認識化されることで共存行動へ移行している。この過程から競争基調から需要縮小を経て産地および個社の生き残りの協調基調へ企業行動が適応変化していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はヒアリング調査によって,条件不利地域の企業経営に強く影響している外部環境要因,人口減少による環境要因と特徴を明らかにできたことで,次年度以降の調査である条件不利地域での企業の適応行動の調査基盤が整った。 環境要因データの収集については,補足的に条件不利地域の外部環境要因の特徴を抽出するために統計データを活用し,経営環境を社会的環境(人口動態・生産年齢人口),経済的環境(企業数,従業者数,付加価値額,県内総生産額・労働生産性・雇用情勢,特化係数)としデータ整理を行った。 企業調査についても個別事例と業界全体のデータ収集ができたことで,企業および企業間における外部環境変化とその適応行動の1パターンを明らかにできた。以上より本年度の進捗としてはおおむね順調に研究を進展できている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では条件不利地域での企業を対象としたウエブアンケート調査の実施を予定している。島根県の事業所のうち本業で業績もしくは企業価値を高めている事業体を選出するためウエブアンケート調査を実施する。質問項目として,企業の現状(事業内容,従業員数,財務状況等),経営環境(環境要因の認識,課題案件,想定競合他社数,取引先数等),適応行動(対策実施項目,開始の契機,継続期間等)について質問を行うことで,企業の環境要因と適応行動の特徴分類を試みる。 またヒアリング調査では,ウエブアンケート調査の回答から幾つかのカテゴリー分類を行い,各分類の典型企業に対してより詳細なヒアリング調査を実施する。アンケート調査の結果から,環境要因と適応行動の観点から複数タイプの企業分類を行い,典型事例と考えられる企業へヒアリングを実施する。それぞれの環境適応過程について詳細データを収集する。
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Causes of Carryover |
ヒアリング先企業の受入れ事情(対応先企業の個別事情およびコロナ禍での受け入れ不可,延長が主な理由)により,予定数の調査訪問がかなわなかったため当初予算より使用額が少なく次年度使用額が発生している。
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