2022 Fiscal Year Research-status Report
A study of the impact of diversity of interpretations and collaboration within stakeholders on market creation
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22K01762
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
本條 晴一郎 静岡大学, 工学部, 准教授 (50506748)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ソーシャルイノベーション / 市場創造 / エコシステム / ケア / ブランド / デザイン / サイバネティックス / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、市場創造が実現されるにあたり、関係するステークホルダーが市場や製品の意味を多様に解釈していることがどのような有効性を持つかを明らかにすることである。本研究では市場創造の一形態として捉えられるソーシャルイノベーションの実現を念頭に置いた上で、解釈の多様性と協働の促進が市場創造にどのように貢献するかを、ケーススタディ研究によって一般化して明らかにする。さらに、困難とされているユーザーイノベーションの普及を実現する処方、および、ブランディングにおけるエコシステムの役割についての知見を引き出すことを目指す。 研究初年度である令和4年度は、(1)研究全体の基盤となる理論研究および(2)対象企業についての文献調査・ヒアリング調査を実施した。 (1)の理論研究においては、ソーシャルイノベーションと消費者行動の先行研究を、特に両者の接点に注目してレビューした。ソーシャルイノベーションのスケーリングについて市場創造の観点から検討を行ったことで、多様な解釈を行うステークホルダーがエコシステムで協働する上でケアの概念が重要であることを見出した。さらに、ブランディングにおけるエコシステムの役割について、システム科学の源流であるサイバネティックスの観点で整理した論文を発表し、知見の社会・国民への発信に努めた。 (2)のケーススタディ研究においては、(1)の成果を踏まえケアの概念を念頭においてデータを整理した。本研究は、産業を分析単位として研究されがちな市場創造に対して、マクロレベルの分析では見落とされがちな同一の対象に対する意味解釈の多様性を具体的に捉えることを目指している。意味解釈に注目する上では、企業レベルでデータ収集を行うのみならず、施策レベルのデータ収集を行うことが重要であるという気付きに基づき、データを整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画においては初年度にレビュー論文を執筆するとともに、社会的善行をビジネスの一部とする企業の調査を行い、2年目に「意味」を訴えながら製品を販売する企業の調査を行う予定であった。理論的研究の結果、本研究の実施においてケアの概念が重要であることが見いだされたので、レビュー範囲の変更を行うことになった。また、調査対象企業の都合を踏まえ、調査の順番を入れ替えることになった。ただし、ケア概念の導入によって、調査の順番の変更が容易に実現可能であっただけではなく、ケース研究論文の執筆に着手することができた。以上のことから、当初予定していた研究活動はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目である令和5年度は、(1)ケア概念に注目した理論研究、(2)施策レベルのデータ収集によるケーススタディ研究を行った上で、(3)研究成果の報告に努める。 (1)の理論研究においては、初年度の理論研究成果を踏まえ、エコシステムの構築・維持に寄与する協働の実現を具体化する上で、ケアがどのような役割を果たすかをレビューする。 (2)のケーススタディ研究においては、施策レベルのデータ収集に努める。主たる分析単位を企業レベルから施策レベルに変更することで、調査対象企業の数が減らす一方、ケースの数を増やす。 (3)の研究成果の報告においては、国内外の学会報告・学術論文公刊・査読付き論文雑誌での発表を行う。また、広く社会・国民に発信するため、書籍としての公刊や、ビジネスセミナーでの講演、公開研究会の開催、SNSを含むウェブサイトでの公開など、多種多様な形での発表を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
計画においては社会的善行をビジネスの一部とする企業の調査を行い、2年目に「意味」を訴えながら製品を販売する企業の調査を行う予定であったが、調査対象企業の都合を踏まえ、調査の順番を入れ替えることになった。また、企業レベルでデータ収集を行うのみならず、施策レベルのデータ収集を行うことにした。これらの変更により、調査スケジュールを見直したため、次年度使用額が生じた。 順番の入れ替えに伴う変更は研究期間を通して平滑化される上、ケース数自体は増加する予定である。
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