2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K01769
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
里村 卓也 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (40324743)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 限定合理性 / 合理的不注意仮説 / 消費者選択行動 / 選択行動モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、限定合理的な消費者の選択行動の理論化と数理モデルの開発を行い、さらに消費者による選択データを利用して、提案モデルによる実証分析を行うことである。 マーケティング分野では、従来から消費者行動論を中心として合理的ではない消費者の行動に関する研究が進められ、これらの研究をもとに、計量モデルとして限定合理的な消費者の選択行動の研究も進められてきた。一方、経済学では近年、合理的不注意仮説を用いた経済主体の行動のモデリングや実証分析が注目されるようになってきている。本研究は、近年のこれらの成果を取り込んだ、新しい限定合理的な消費者の選択行動モデルの開発を行い、実証分析による分析をとおして消費者の選択行動についての新しい知見を得ることを目指すものである。さらに開発されたモデルを用いたマーケティング戦略評価方法の構築を行うことで、マーケティングおよび消費者行動における理論的な貢献も目指す。 令和5年度は前年度に引き続き、限定合理性を考慮した多変量2項選択モデルについて検討を行った。本研究開始後に、マーケティング分野でも限定合理的な消費者の選択行動モデルが発表されたために、それらの先駆的な研究を参考にしつつ、本研究課題の進め方も修正する必要があった。そのために、まず消費者の選択行動モデルについての再レビューを行い、ここからモデル発展のための考え方を整理した。さらに消費者の限定合理性と不確実性への対応、合理的不注意仮説に関する研究について調査をさらに進めた。これらの結果をふまえて、複数の代替案から複数の選択肢を選ぶ多変量2項選択モデルについて、限定合理性を考慮するモデルの検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始後に新しい論文としてマーケティング分野でも限定合理的な消費者の選択行動モデルが発表された。そのため、対象とする課題の設定や研究の方向性を再考する必要が生じていた。 令和5年度はモデルの再検討のために、消費者の選択行動モデル全般について再レビューを行い整理するともに、消費者の限定合理性と不確実性への対応、合理的不注意仮説に関する研究についての調査も行った。これらの調査結果をふまえて、限定合理性を考慮した多変量2項選択モデルについてもさらなる検討を行うことが必要となり、研究課題の予定が変更となった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は限定合理性を考慮した多変量2項選択モデルを完成させ、データによる実証分析を行う。消費者による合理的不注意仮説と不確実性への対応を考慮した離散選択モデルとして、このモデルを構築しシミュレーションデータを用いた検証を行う。さらに消費者の時系列での選択行動を記録したパネルデータを利用することが適切であるため、パネルデータを入手して推定を行う。推定にはMCMC 法を利用するためワークステーションを利用する。研究成果を国際学会にて発表し、国際学術誌への投稿を行う。 次に限定合理性を考慮した離散/連続選択モデルを構築する。シミュレーションデータを利用したモデルの推定と検証を行う。推定にはMCMC 法を利用するためワークステーションを利用する。
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Causes of Carryover |
令和5年度は国内での研究発表については、招待講演のために旅費が支給されたので不要となった。また研究の遅れにより海外での学会報告を次年度以降に延期した。令和6年度は国内・海外への学会への参加と、実証分析に必要なデータの購入のために使用する。
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