2022 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive study of the motivations and implications of disclosing non-GAAP earnings
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22K01810
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
中條 祐介 横浜市立大学, 国際商学部, 教授 (40244503)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Non-GAAP指標 / 非GAAP指標 / IFRS / 財務報告 / コーポレート・ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
今世紀に入り、わが国企業は、国際化とガバナンスの促進・強化を求められてきたが、これは情報開示においても例外ではなかった。本報告では、この財務報告環境の変化を、Non-GAAP指標の開示という現象を切り口に、「会計情報の役割の再認識」を考察した。 財務報告に影響力を有する海外諸機関によるNon-GAAP指標の定義を確認したうえで、欧米におけるNon-GAAP指標の浸透要因について検討した。米国では当初、新興企業を中心に利用が広がったが、現在では大企業にも広く浸透しており、そこにはSECによる法規制を通じた情報の品質改善に向けた取り組みがあることが指摘される。EUでは、IFRSへの移行による裁量性の高い財務諸表への転換と特別損益項目の表示禁止がAPM(EUでの呼称)の浸透要因である。 日本企業における当該情報開示の実態調査から、①欧米企業に比べ日本企業の利用は低水準であること、②業績目標の開示などの情報提供目的と財務制限条項など利害調整目的の両面での使用が認められること、③IFRS適用企業の増加に比例し利用が増加していること、④開示府令改正以降、役員報酬の決定方法での利用が多数確認されること、⑤日本基準適用企業では、EBITDA、フリーキャッシュフロー、事業利益が、IFRS適用企業では調整後利益、EBITDA、事業利益の利用が多いこと、⑥IFRS適用企業では調整表の開示が進んでいるが、日本基準適用企業では稀である。Non-GAAP指標は、情報提供と利害調整それぞれの目的で利用されるとともに、役員報酬の決定というガバナンス目的でも利用されており、ここに財務会計の機能拡張の可能性が指摘される。 以上よりNon-GAAP指標開示に関する規制等を持たないわが国は低品質の情報が開示されるリスクを含んでおり、これを回避するためには、欧米のように規制や指針を設けるべきであることを指摘したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会発表、雑誌への投稿・掲載と順調に成果を上げたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にに基づいて、計画通り、工程管理を進めていきます。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による研究会、学会活動のオンライン化により、特に旅費関係の支出が節約されたこと。
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