2022 Fiscal Year Research-status Report
運動行為論の展開:GPS・SNSビッグデータを用いたリアル/オンライン分析統合
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22K01871
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
濱西 栄司 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (30609607)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ビッグデータ / 社会運動 / 空間 / 抗議 / デモ / 集会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、公共的な場における運動行為(抗議デモ・集会等)の特徴とリアル/オンラインの展開・成果をめぐる因果的メカニズムを、非組織論的な観点から国際・歴史比較的に明らかにすることにより、民主社会における運動行為のありようや成果・意義をめぐる討議と合意形成の空間の創出に資する新たな学術的基盤を構築することにある。 2022年度は、2015 年の反安保法制の大規模抗議集会(7 月15 日と8 月30 日)を、スマートフォンのビッグデータを用いて包括的に記述し、査読論文「運動行為のビッグデータ記述」(『現代社会学理論研究』16)としてパブリッシュした。まず社会運動の展開を運動組織戦略から説明する主流アプローチに対して、運動行為そのものに焦点をあてる必要性を指摘した。次にビッグデータの仕様と対象エリア、差分日の設定、抗議集会の3つの特徴(全体の変化、増減速度・幅、性別・世代別の変化)を説明し、ビッグデータを用いて、両集会の全体、および性別・年代別の変化を1 時間ごとに描き出し、最大値とピーク、そして性別・年代別の増減、1 時間ごとの人数を合計したのべ人数を性別・年代別に整理し、2 つの抗議集会の特徴――男性中心・世代均衡(7 月15日)と性別均衡・高齢者中心(8 月30 日)――を把握した。最後に抗議集会のありよう(集会の位置と日時、集結・解散プロセス)に作用しうる空間的・時間的要因について考察をおこなった。 抗議集会それ自体を分析対象として明確に捉える視座、抗議集会をビッグデータで捉える具体的方法の提示と実施、抗議者の時系列変化とのべ人数での特徴把握、空間的要因と時間的要因が抗議集会におよぼす作用への着目などは、オリジナルな成果であり、国内外問わず前例のないものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗議集会の記述・分析成果を論文としてパブリッシュできたことは重要で、その点は想定以上に研究が進展している。特にビッグデータを用いた集会記述の方法論の提示は、多様な事例に研究を拡大していくうえで欠かせない。また空間的・時間的要因に関する考察は、社会運動の組織戦略に回収されないような運動の側面(抗議者の集結・解散のタイミングやプロセス)を示唆するものであり、運動行為をめぐる因果関係の研究にも寄与しうる。またメーデーに関するデータ整理も順調に進んでいる。 他方、当初、大規模な購入を計画していたTwitterデータについては、業者とのやりとりから国内ならではの問題も判明したため、2022年度は国会前抗議に限定して試験的にデータを購入するようにした。その分の予算は2023年度に、確実な成果の得られるSNSデータ、及びGPSビッグデータのより詳細なデータの購入へ用いる。 記述分析の蓄積をベースとした解釈的研究も進めており、共著本(刊行予定)においては、運動行為が、社会変動一般と社会運動一般の双方向的影響関係の結節点となるという新しい解釈を提起することができた。また、より大規模なデータ購入を進める新しい研究プロジェクトを開始する前に、これまでの成果を、著書にまとめるべく執筆を進めている。 以上から、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もまずは計画通りにデモ行進と抗議集会の記述を地道に続けていき、比較分析を精緻に行っていく。デモ行進についてはTimelineがある限りにおいて国内外の事例を記述し、抗議集会については、国内の事例をGPSビッグデータで記述するとともに、海外のTwitterデータの収集を進める。国内事例については、より詳細なデータを購入することで、2015年反安保法制抗議集会のさらなる分析を行っていく。 同時にこれまでの成果をまとめた書籍を執筆し、「運動行為論」の体系化を進めていく。運動行為展開のメカニズムを説明する新しいモデルを構築するとともに、運動行為の帰結のメカニズムを記述し考察する。また、個人の運動行為をいかにとらえるかについても検討する。政治学、政治地理学、情報学なども総合する形で、社会運動の社会学をこえた「社会運動の社会科学」を構想し、さらに大規模なデータ購入に向けた新しい研究プログラムのたちあげを進める。
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Causes of Carryover |
初年度に大規模な購入を予定していたSNSデータについては、業者とのやりとりから国内ユーザーの特性に基づく問題が判明したため、2022年度はリアルデータと比較可能な事例に限定して試験的に購入した。残りの予算は、比較分析に基づいて確実な成果が得られるケースを探索しつつ、2023年度にGPSビッグデータのより詳細なデータの購入に用いる。なおビッグデータはデータ量が日々大きく増加し、利用可能な範囲も広がる傾向があるので、定期的に十分に業者とやり取りを行っている。
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Research Products
(1 results)