2022 Fiscal Year Research-status Report
集合的記憶論再々考ー東洋思想で逆照射した日系アメリカ人強制収容の記憶
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22K01906
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
滝田 祥子 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 教授 (40305462)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 集合的記憶 / 東洋思想 / 日系アメリカ人強制収容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東洋思想的観点から「集合的記憶」についての社会学的分析を見直そうとするものである。本研究でいう「東洋思想的観点」とは 、西田幾多郎が哲学的に検討した日本の仏教思想をベースに、人間が社会や自然などの環境と係わり合いながら場(境界帯)を生成し、 相互作 用により世界をともに創出している状況を見る視点である。 申請者はこれまでアルヴァックスの集合的記憶理論を、第二次世界大戦中に日系アメリカ人が強制収容された跡地への巡礼の旅の記憶が生成 される現場を詳細に観察することにより「再考」してきた。今回新たに展開させようとしている研究では、これまでの研究の蓄積を、思想的観点から「再々考」するものである。具体的には、収容経験を元に執筆された文芸作品のなかで「西欧的自我」と「経験」がいかにして主題とし て立ち現れてくるか、その言説の変化を1次資料、2次資料を使いながら再解釈していく。 2022年度には、当初計画通り、研究に必要な1)1次資料「鉄柵」「南加文芸」などの帰米2世の知識人、文芸同人が執筆した文芸作品集、2)2次資料東洋思想研究のために三枝博音全集等、を購入。また。研究基盤を固めるためにパソコンを揃えた。ブラジルから国際交流基金の招聘で渡日したVeridiana Cordeiro氏との共同研究で、東洋思想を日系ブラジル人女性3世代の語りの分析に応用し、論文「“It tastes like home to me”:Cooking and remembering among Nipo-Brazilian women」を共同執筆した。この論文は、第17回アメリカ社会学会大会(ロサンゼルス)のラウンドテーブルで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は学部の管理職の仕事に忙殺され、研究に集中して取り組む時間の確保が難しかった。研究に必要な資料やパソコンの整備、1回の海外学会報告は実施することができたが、当初の計画より進捗状況は遅れている。海外渡航費用が当初予定より多くかかり、2023年度、2024年度予算にまで食い込んでしまった。今年度は、比較的コロナ状況以前の海外渡航費用に近い執行ができそうである。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は世界社会学会大会(メルボルン、オーストラリア 6月25日から7月1日)に参加し、研究の途中経過を報告する。報告を元に、論文の 執筆を進める予定である。国内学会への参加、研究成果報告も計画している。 アメリカ合衆国での調査はは、2024年度に実施する予定である。西欧的な見方と東洋的な見方のフィールドワークの一環としてこのプロジェクトを位置付けているので、「収穫」などの文芸雑誌の分析も必要になるかもしれない。 2024年度には成果を論文として国際学術誌に投稿すると同時に、本研究が継続的なプロジェ クトとして発展していくための方 策を検討するつもりである。現時点で、Veridiana Cordeiro氏との共同論文「“It tastes like home to me”:Cooking and remembering among Nipo-Brazilian women」を国際学術誌「Asian Studies」に投稿し、査読の第二段階の直しをしている。
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