2022 Fiscal Year Research-status Report
エスニック・メディアの先へ―異なる声の響く新しい媒体=空間に関する社会学的研究
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22K01921
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
町村 敬志 東京経済大学, コミュニケーション学部, 教授 (00173774)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エスニック・メディア / 社会学 / 公共圏 / 移動・移住 / エスニシティ / 移民 / 外国人住民 |
Outline of Annual Research Achievements |
2000年代以降、インターネットの登場とともに、移動者のコミュニケーション環境は劇的な変化を遂げた。メディア全体の脱場所化と再場所化が同時進行するなかで、移動者による公論空間形成の実践はどう変化したのか。異なる声の響き合う新しい媒体=空間はいかに可能か。本研究は次の3つの課題を設定した。1)エスニック・メディア(移動者)はデジタル革命にどう対応したのか。2)移動者・移住者の公論空間は、インターネットによって豊かさを増したのか。3)エスニック・メディアというフォーマットは有効性を失ったのか。 初年度にあたる2022年度は、計画に従い、次の作業を進めた。 1)90年代エスニック・メディアの追跡研究とアーカイブ化: 1990年代に自身が行った一連の調査について改めて整理を行い、インタビュー記録のデータベース化を進めた。これをもとに追跡可能かどうかを各種資料と照らし合わせながら検討し、次年度に向けた調査計画を立てた。そのため、横浜・海外移住資料館ほかで資料収集をおこなった。 2)デジタル化するエスニック・メディアの多面的進化に関する探索的研究: 印刷物として刊行されていたエスニック・メディアのその後の変化を移動者集住地域で実際に確認するため、横浜市鶴見区、群馬県大泉町、東京都新宿区新大久保を訪問し、関連施設・商店などで資料収集を行うとともに予備的な聴き取りをおこなった。 3)エスニック・メディアの系統的な変容モデルの構築: 国内外における研究進展を確認するため論文検索を進めたほか、図書館等で入手困難な新著について購入し、内容の検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各課題について、下記のように作業が進行しており、全体としておおむね順調に進展していると考えられる。 1)90年代エスニック・メディアの追跡研究とアーカイブ化: 1990年代に実施したエスニック・メディア編集・発行者インタビューについて、全体のうち40件をアーカイブ化でき、その内容検討により調査実施の方向性を固めることができた。引き続き、アーカイブ化の作業を継続している。 2)デジタル化するエスニック・メディアの多面的進化に関する探索的研究: 鶴見・大泉・新大久保では、過去のエスニック・メディアの変容について確認をおこなうとともに、オンライン時代になお現物で刊行されている新規メディアの組織的収集を進めた(ブラジル系・ペルー系・韓国系など10タイトルを収集)。オンライン上のメディアについて、有識者・関係者からの情報収集をおこなうほか、実際に探索を開始した。 3)エスニック・メディアの系統的な変容モデルの構築: グローバル化やデジタル化の進行により、メディアが多様化しただけでなく、移動・移動者の形態も多様化していることを確認した。「エスニック」という概念自体の再考・再構成を含め、移動とメディアの接合の形とそこにおけるエージェントのあり方について再検討の必要を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実績を踏まえ、各課題について次のような推進方策を予定している。 1)90年代エスニック・メディアの追跡研究とアーカイブ化: 残りの作業を継続するとともに、過去の収集資料のアーカイブズ化を進め、報告書を含めた公開に向けたフォーマット決定とデータ入力をおこなう。 2)デジタル化するエスニック・メディアの多面的進化に関する探索的研究: エスニックな公論空間の変容について、大阪・神戸、名古屋、浜松・豊橋、東京・横浜、北関東での探索を行い、インタビューやメディアの現物収集を実施する。オンライン上のメディアについて、組織的な収集を継続する。 3)エスニック・メディアの系統的な変容モデルの構築と成果公表: 上記の作業を踏まえ、変容モデルの日本的特色について検討を進める。現在所属している機関の利点(コミュニケーション学部)を生かし、最新のメディア研究・コミュニケーション研究の成果を取り入れるための活動を進める。必要な書籍・資料を購入するほか、成果の中間報告に向けた論文作成を進める。
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Causes of Carryover |
予算を書籍・資料購入向けとして計上し、その残額が生じた。比較的少額のため、次年度分と合算した上で、当初の使用計画に沿う形で、書籍(メディア関連)購入や調査出張旅費の一部として使用する。
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Research Products
(1 results)