2022 Fiscal Year Research-status Report
The Effect of the Socio-Economic Structure on Mutual Aid of Residents.
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22K02003
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
深井 英喜 三重大学, 人文学部, 教授 (10378276)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地域福祉 / 相談支援 / 地域支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の取り組みの一つは、本研究が研究対象とする地域の課題解決力が、現在の政府の地域福祉政策に関する考え方の中で、どのような位置づけにあるかを特定することであった。社会福祉法改正や生活困窮者自立支援法の成立過程において出版された政府文書を整理するとともに、法律作成に関わった官僚や関連委員会に関わった学術経験者の論述等の整理を行った。 これを通して、本研究が課題としている点について、その論点を再確認できた。第一に、日本のこれまでの社会保障に対して、この間の法改正が相談支援を新たな支援項目として導入する試みであり、その目的は「つなぐ支援」であることを。そして第二に、この「つなぐ支援」の受け皿として、「地域支援」の整備が位置付けられていること。そして第三に、こうした「つなぐ支援」や「地域支援」が必要とされる背景として、少子高齢化による家族構造の変化と、労働市場の変化による雇用構造の変化とによる自助機能の変化が指摘されていること。しかしながら、第四に、これらの家族構想および雇用構造の変化が地域の互助機能に及ぼしている影響については、いずれの文献や論者においても論点になっていないこと。これらの4点について、より体系的に論点を整理することができた。 また本年度は、協力が得られた県内A市の許可を得て、A市において生活困窮者自立支援制度の相談事業の利用者のアセスメント記録を閲覧し、A市の要支援者の特徴について検討をした。 分析途中であるが、確認できた傾向の一つは、中年世代(40歳台)および高齢者世代(65歳以上)に相談者のピークがあることが確認できた。また、多くのケースにおいて、障がいや低学歴にともなう雇用の不安定性などの脆弱要因を抱えていることが特徴であった。これらの脆弱要因が、A市のなかでどのように発言したのかについて、今後踏み込んで考察する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画として、社会福祉法改正および生活困窮者自立支援法作成の背景となった考え方を具体的に検討し、これらの法整備の基礎となった考え方における地域支援についての考え方を整理することを計画していた。この点についてはおおむね、当初準備していた関連資料いや文献に一通り目を通すことができたと考えている。 また、地域の家族構造や雇用構造の変化が地域の互助機能に与える影響について、統計的な考察を進めるために、関連する統計データの収集作業も順調に進めることができた。 以上から、2022年度について順調に研究を進めることができたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の作業を通して、「つなぐ支援」の受け皿づくりとして「地域支援」の必要性が指摘されている点を確認した。これを踏まえて、家族構造や雇用構造の変化が地域の住民団体の経営や運営に及ぼしている影響について、検討を進めていく。 第一に、政府統計データを主に用いて、地域の家族構造や雇用構造の変化とその社会的影響の考察を進める。第二に、協力が得られる県内市町において、自治会や民生委員といった地域の住民組織に対する調査を実施し、その運営の実態や歴史的経営などについてのデータの収集を行う。現在、これまでにすでに関わりのある県内2市町に、調査計画を提案して協議中である。 第二に、2022年度に実施したA市の生活困窮者自立支援制度利用者に関する調査の分析作業を進める。支援制度利用者の年齢と直面していた問題属性に傾向が見られたため、これらに着目して、A市の社会構造のなかでこれらの属性を持つ個人が孤立する社会的要因を検討することを試みる。
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Causes of Carryover |
2022年度は文献研究が中心となったため、本研究のために使用するコンピュータ等の機材の購入を見送ったことが、次年度使用額が生じた一番の要因である。 2023年度は、データ分析の作業も計画しており、2022年度に予定していたコンピュータ等の準備も進めていくことになる。
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