2022 Fiscal Year Research-status Report
平時の児童虐待対応と災害時の連動-被虐児を救う災害時法制の再構築
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22K02075
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鈴木 秀洋 日本大学, 危機管理学部, 准教授 (30780506)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 災害時避難行動要支援者 / 要配慮者 / 児童虐待対応 / 要保護児童 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初計画では、固定の自治体担当者をメンバーとする研究チームを組んで研究を進め、全国の自治体アンケートを行う予定であった。しかし、事前に研究代表者が無作為的に都道府県・市区町村に対して下調べ的調査を行ったところ、平時の児童虐待対応と災害時の連動について取り組んでいる自治体は皆無であった。そこで、全国の自治体アンケートを行っても取組について得られる果実はないことが高度の確率で明らかとなった。 研究代表者は、これまでも自治体(都道府県・市区町村含む。)における子ども部局及び防災・災害対策部局の審議会委員やアドバイザーを行ってきており、両部局の担当者との意見交換は日常的に行ってきた。ただし、どの自治体の部局においても、上記災害時の児童虐待対応について明確に計画等に組み込んでいるものを発見できなかった。 継続ヒアリング調査は行ってきたが、上記の状況に鑑みて、研究手法を単純アンケート・取組調査の手法から、問題提起型の調査に変更することとした。第一に、児童虐待対応部局に対しては災害時対応を働きかけ、被虐児童が災害時に直面する出来事の問題提起を行う。②また、災害担当部局に対しては災害時避難行動要支援者に被虐待児童を組み込んだ対応の書き込みを行う。このような、二部局にそれぞれに対して、問題提起と啓発・周知を行いつつ、つなげるための下地作りの調査・意見交換を始めてみた。 具体的には、三重県、宮崎県、世田谷区、品川区、江東区等と意見交換をしてきた(なお、大川小津波裁判から学ぶべきことが多いため、大川小津波裁判関係者との継続的な意見交換も重ねている。)。 こども家庭庁も設置され、子どもにかかる計画等が大きく動く局面にある中で、固定の研究チームは設置せず、随時行政担当者と現実の課題と問題提起を一年かけて(自治体側の状況に配慮しつつ)断続的に調査分析を行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は、自治体(都道府県・市区町村)の災害時において被虐待児童に対してどのような対策がなされているか、ということについて、アンケートやヒアリングを行う前段階の方向性の会議を設定することを、まず行うことを当初は予定していた。 しかし、研究代表者が、自治体のホームページで確認し、また防災計画を取り寄せて確認し、更に、実際に無作為的に、自治体の防災・災害対策部局又は児童虐待対応部局に対して電話で担当者に調査するなどしたところ、こうした災害時における被虐待児童に対する明確な計画や指針等を定めている自治体はないことが分かった。 それゆえ、実際にこうした対応を行っている自治体担当者を招集して会議を設置することは難しく、またアンケートを行っても、取組についての事例を収集できないことが高度の蓋然性の下明らかとなった。これも一つの研究成果である。 そこで、研究方法を修正し、研究推進の設置会議及び単純アンケート・取組調査の手法から、問題提起型の調査に変更することとした。第一に、児童虐待対応部局に対しては災害時対応を働きかけ、被虐児童が災害時に直面する出来事の問題提起を行う。②また、災害担当部局に対しては災害時避難行動要支援者に被虐待児童を組み込んだ対応の書き込みを行う。このような、二部局にそれぞれに対して、問題提起と啓発・周知を行いつつ、つなげるための下地作りの調査・意見交換を始めてみた。意見交換を随時行い、協力自治体もあるため、研究としては概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
児童虐待対応にフォーカスした場合に、こども基本法の制定、こども家庭庁の設置、児童福祉法の改正等大きな子ども施策の動きがある中で、災害時の取組に関しても注目度が上がるようにしていきたい。 また、現在、災害対策としては、災害対策法の改正や来るべき首都直下型地震や南海トラフ型地震を想定した地域防災計画の改定などが求められている。 研究代表者は、現在東京都防災会議委員や「東京防災」「東京くらし防災」編集検討委員会委員を務めている。東京都の地域防災計画改定や上記雑誌改定の時期であり、被虐児を救う災害法制の再構築の観点から、その具体化が必要である。災害時に被虐児の命が救われる仕組み作りの一歩を東京都の担当者とも連携して研究していきたい。
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Causes of Carryover |
令和4年度の現地調査予定の日程調整がうまくいかなかったため、令和5年度に旅費の一部として使用する予定である。栃木への現地調査への交通費等として計画している。
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