2023 Fiscal Year Annual Research Report
量子ビームイメージングが拓く食品の超微細構造依存的な品質変化の解明
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22K02089
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
島田 玲子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (60331451)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 茂昭 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (80410223)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | パン生地 / でんぷん / グルテン / エネルギー分散型X線分光法 / 超微細構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はX線,中性子線,電子線等を用いて,今まで未解明であった食品の超微細構造の形成過程や構造依存的な品質変化を解明することを目的とした.内部構造顕微鏡等を併用することにより,食品中に分散する成分の局在を可視化する既往手法は,試料の予備凍結や染色などの前処理が不可欠となるため,パン生地の超微細構造そのものに影響を及ぼすことが懸念されていた.そのため本研究では食品の超微細構造を非破壊・低侵襲かつリアルタイムで観察することにより,食品の超微細構造変化の結果として生じる力学的な品質特性との相互関連性を明らかにすることを試みた.パン生地試料は配合割合(含水率5段階)およびミキシング時間(4段階)を変化させ,超微細構造および質的変化を明らかにするために,エネルギー分散型X線分光法やレオメータによる力学緩和解析を行った.その結果,内部構造の変化は配合割合よりもミキシング時間による影響を大きく受けることが明らかになった.すなわち,ミキシング時間が短いとネットワーク構造が未発達で,ミキシング時間が長いとネットワーク構造が損傷を受ける.このネットワーク構造は窒素が多く検出されたことから,タンパク質に起因する構造であると推察された.さらに同一配合割合でミキシング時間を変化させた試料について,炭素,水素,酸素,窒素,塩素などの元素の局在は均一ではなく,ミキシング時間によって変動することが分かった.定量化した内部構造の情報と力学特性の間には,相互関連性が示唆された.さらに誘電分光法で得られたパン生地中の水分子の誘電緩和挙動と構造依存的な力学緩和挙動から,超微細構造の微小時間における変化がモニタリング可能であることが示唆された.現時点では食品の超微細構造の形成過程や構造依存的な品質変化をリアルタイムでモニタリングする手法の確立に至っていないため,モニタリング手法等の諸条件の再検討が課題である.
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Research Products
(8 results)