2023 Fiscal Year Research-status Report
男性の出生意欲の規定要因—規範意識や青少年期の経験に注目して
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22K02157
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中村 真由美 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (30401269)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ジェンダー / 出生意欲 / 母娘関係 / 価値観 / 意識 / ワークライフコンフリクト / 欲しい子供数 / 共分散構造分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
前回調査(妻についての調査結果)の分析を進め、社会学におけるトップジャーナル(International Sociology)に論文を掲載することができた。手法は共分散構造分析である。日本における既存の出生意欲の研究では、経済的要因に主なフォーカスが当てられていた。しかし、本研究の知見では、経済要因以外の要因(意識・価値観)にフォーカスしている。(1)女性の出生意欲(欲しい子供数)には複数世代にわたる心理・意識的な要因が関わっていた。女性が子供のころ(12歳のころ)、母親が母親業を楽しんでいたと女性が認知していたかどうかが、大人になってからの女性の出生意欲に影響していた。自分の母親が母親業を楽しんでいたと認知している女性は出生意欲が高い傾向にあった。 (2)自分の母親が母親業を楽しんでいたと認知していた女性は、子供に対してポジティブな価値観(たとえば子供には潜在的に価値があるという価値観)を持つ傾向があり、さらにそのような価値観を持つ女性ほど出生意欲が高いことが明らかとなった。 (3)母親が母親業を楽しんでいたかどうかには、母親が置かれていた社会経済的な要因が影響していた。学歴の高い女性やワークライフコンフリクトの低い母親は母親業を楽しんでいた傾向があった。 上記の結果から、母親が、母親業が楽しめるような社会的・経済的環境におかれていることが、次の世代の(娘の)出生意欲にも影響することが明らかとなった。少子化対策では、経済要因にフォーカスされることが多いが、見過ごされていた、経済要因以外の重要性を改めて提示する研究結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前回調査で取得した既婚女性を対象としたデータの分析を進め、論文をリバイスするのに時間がかかったことと、大学の業務が忙しかったことから、当初予定していた既婚男性の調査は3年目に行うこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
既婚女性の分析結果をもとに、既婚男性に対してWEB調査を実施予定である。
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Causes of Carryover |
前回調査データの分析・出版と大学での業務の多忙により、既婚男性を対象とした調査実施を3年目に延期したため。
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