2023 Fiscal Year Research-status Report
摂取した食品成分等が大腸上皮細胞の活性酸素産生系Nox1に及ぼす影響の総括的解析
Project/Area Number |
22K02173
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Research Institution | Shokei Junior College |
Principal Investigator |
菊池 秀彦 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 教授 (10301384)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 活性酸素 / 大腸細胞 / 白血球 / フィトケミカル / 定量性PCR |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度確立したヒト大腸細胞のNox1及びその関連分子(NoxA1, NoxO1, p22-phox)の遺伝子発現量(転写量)の定量性PCR法 (qPCR)による定量システムを利用して、種々のフィトケミカルがヒト大腸癌由来のDLD-1細胞の活性酸素産生系に及ぼす影響を調査した。DLD-1細胞に分化誘導剤の一つであるレチノイン酸とフィトケミカル(ブテイン、イソリキリチゲニン、レスベラトロール、エクオール、ウロリチンA及びスルフォラファン)を添加して48時間培養した。これらのフィトケミカルはNox2(白血球の活性酸素産生系)を増強する活性を示す化合物である。細胞からRNAを抽出してqPCRに供し、Nox1及びその関連分子(NoxA1, NoxO1, p22-phox)の遺伝子の発現量を定量した。その結果、レスベラトロール以外のフィトケミカルがNox1の転写量を顕著に抑制することが明らかとなった。来年度以降は、対象となるフィトケミカルの種類をさらに増やして、それらの効果を検証して行く予定である。 一方、フィトケミカルが白血球の活性酸素産生系Nox2に及ぼす影響の解析については、コーヒー特有のフィトケミカルであるカフェストール及びカーウェオールが共にこれを活性化することを見いだし、Fundamental Toxicological Sciences誌に筆頭著者として発表した(Kikuchi H. et al., Fumdam. Toxicol. Sci., 10: 233-240, 2023)。 Nox2についても、興味深い研究データをいくつか得ており、来年度以降さらに解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度確立したヒト大腸癌細胞株でのNox1及びその関連分子(NoxA1, NoxO1, p22-phox)の転写量の定量方法を駆使して、種々のフィトケミカルが大腸のNox1遺伝子の発現に及ぼす影響を解析することに成功した。既に、興味深い幾つかのデータを得ており、来年度以降の研究の推進が期待できる。加えて、白血球の活性酸素産生系へのフィトケミカルの影響についても、新たな知見を蓄積しており、来年度に論文として公表できる見通しが立っているため、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度構築した遺伝子発現量解析システムを駆使して、さらに種々のフィトケミカル類がNox1及びその関連分子(NoxA1, NoxO1, p22-phox)の遺伝子発現に及ぼす影響を 網羅的に解析していく。さらに、ヒト大腸癌細胞株でのNox1による活性酸素産生能の活性化方法や定量方法の開発にも取り組んでいく予定である。 現状安定して成果を挙げているフィトケミカル類のNox2への影響についても、引き続き解析を進めて論文発表等に積極的に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
特定のフィトケミカルの生理活性について非常に興味深いデータが得られ、この解明や論文執筆等に多くの時間を割いたため(フィトケミカル1種類あたりの 研究時間が増大した)、種々のフィトケミカル類の購入に係る経費が削減されたことが主な原因である。来年度以降は、生理活性の高いフィトケミカルをさらに 強力にスクリーニングするため、様々なフィトケミカル類(高価なものも含む)の購入を計画しており、その購入費に予算の多くを充てる予定である。
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