2023 Fiscal Year Research-status Report
ヨーロッパの中国系新移民帰国者次世代にみる進路選択に関する教育人類学的研究
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22K02370
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
山本 須美子 東洋大学, アジア文化研究所, 客員研究員 (50240099)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 中国浙江省出身者 / ヨーロッパ / 中国系次世代 / 帰国者 / 進路選択 / 教育人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は第一にイタリアのプラートの中国系移民に関する先行研究をレビューし、現地調査に備えた。 第二に、スペインのバルセロナとイタリアのプラートで2023年11月に現地調査を実施した。バルセロナとプラートの中国系移民は中国浙江省出身者が多数派である。浙江省出身者次世代のライフヒストリーを構築するインタビューを実施したり、プラートの中国人生徒の多い高校の教師に中国人生徒の抱える問題について話を聞いたりした。 イタリアのプラートはヨーロッパにおける最大の中国人集住地区であることによって、次世代の社会統合に特徴が生み出されていることがわかった。プラートで生まれ育った次世代は、中国人生徒が多いイタリアの学校に通い、イタリア語能力不足や人種差別を経験することによって高校を中退する者が多かった。親の衣服卸売業を継ぐ場合が主流で、「プラートの中国人」というアイデンティティを形成していた。 コロナ禍の影響については、バルセロナとプラートの浙江省出身者の親世代は、中国の方が安全だと考え帰国を望み実際に帰国した者もいたが、コロナ禍後はヨーロッパに戻っている者が多かった。コロナ禍によってビジネスにダメージを受け、解雇される者もいたが、何とか乗り切っている者もいた。次世代に関しては、コロナ禍でも親と一緒に中国に帰国する者はほとんどおらず、ヨーロッパ社会に統合し、中国へ帰国することを選択する者はほとんどいないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
浙江省出身者の多いスペインのバルセロナとイタリアのプラートにおいて現地調査を実施することができ、コロナ禍の影響や次世代の進路選択についての調査結果を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
プラートの浙江省出身者次世代の社会統合の特徴をまとめて論文として公表する。さらに、浙江省出身者の多いフランスのパリでの現地調査を実施し、バルセロナやプラートの状況と比較をする。
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Causes of Carryover |
書籍購入を予定していたが、購入予定の書籍が入手困難であったため。
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