2022 Fiscal Year Research-status Report
北欧4か国の事例を基にした幼児期の音楽実践プログラム開発の試み
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22K02478
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Research Institution | Koriyama Women's Junior College |
Principal Investigator |
深谷 悠里絵 郡山女子大学短期大学部, その他部局等, 講師 (00927288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 政夫 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (70320934)
安部 高太朗 郡山女子大学短期大学部, その他部局等, 講師 (40847711)
柴田 卓 郡山女子大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (60762218)
柴田 千賀子 仙台大学, 体育学部, 教授 (80639047)
西浦 和樹 宮城学院女子大学, 教育学部, 教授 (40331863)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 音楽教育 / 幼児期 / 主体性 / 保育音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究活動初年度は、子どもの主体性を尊重した保育活動を展開するデンマークとスウェーデンのナショナルカリキュラムを基に、子どもの主体性を尊重することと音楽教育の関係について分析を行った。また、ナショナルカリキュラム上の音楽活動の位置づけについて、検討対象の一つであるスウェーデンの保育者にオンラインインタビューを試みた。以上の取り組みから、以下のことが明らかとなった。 デンマークにおいては、音楽を含む文化に焦点化した学習環境を構成することで、自分自身の新しい側面に出会い、様々な方法で自分を表現する機会を得ながら、周囲の環境を理解するとし、子どもたちが自ら文化的表現を形成するために、保育者は子どもたちを支援する必要があると明記されていた。加えて、児童教育省や文化省がインスピレーション教材を発行し、演劇や音楽表現の実践を促していることから、就学前教育における音楽活動の位置づけと音楽教育に関する一定の理解を得ることができた。一方、スウェーデンにおいては、ナショナルカリキュラム、保育者養成、保育実践例において筆者らが期待するような位置づけやアプローチ方法を確認することはできなかった。しかし、このことはスウェーデンの就学前教育における音楽教育が軽視されていることを結論づけるものではなく、子どもの権利概念に基づくナショナルカリキュラムの中で、主題とされていないだけであろう。 本研究を通して見えてきたことのひとつは、両国を含む北欧諸国の就学前教育における音楽を焦点化した先行研究が少ないということである。言い換えるならば、本研究における今後の課題を丁寧に調査することにより、民主主義、コミュニケーション、創造性、多様性、自己表現など、子どもの主体性を育む音楽教育のアプローチ方法や実践方法を収集して提示することができ、伝統を重んじる日本の保育実践に新たな視点として寄与する可能性があることが見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は2か国のナショナルカリキュラムについて調査を進め、「デンマークとスウェーデンの就学前教育における音楽活動の位置づけ―ナショナルカリキュラム及びインタビュー調査からの一考察―」(研究ノート)を郡山女子大学研究紀要第59集(査読付き)に掲載した。研究を進めていく中で、乳幼児期の音楽教育に関する先行研究が少なく、実態が明確化できないことが見えてきた。特に、保育者にオンラインインタビューを行ったスウェーデンが顕著であり、子どもの主体性を育む音楽教育のアプローチ方法に関する現地調査が必要不可欠であることが浮き彫りとなった。2023年度は、フィンランドとノルウェーのナショナルカリキュラム調査を行うと同時に、各国で現地調査の交渉と計画を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度は、国内でできる予備調査として2か国のナショナルカリキュラム調査を行った。前述の通り、音楽教育に関する文献や先行研究の少なさから、ナショナルカリキュラムにおける音楽教育の位置づけを捉えるには、限界があることが見えてきた。2023年度は、COVID-19の影響が緩和したことから、現地調査を前倒しで開始しできるよう現在各国の現地協力者と調整を行っている。少なくとも1か国以上の現地調査を実施し、保育実践とナショナルカリキュラムとの関連性や保育者の意識について例証研究を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍ということもあり、調査等での物品や謝金の使用ができなかった。今年度からまた計画的に使用できるよう進めていきたい。
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