2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of next generation energy teaching materials for the acquisition of "carbon neutral" concepts
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22K02512
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
長南 幸安 弘前大学, 教育学部, 教授 (30250674)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | カーボンニュートラル / メタンハイドレート / クリーンエネルギー / 水蒸気改質 / 水素エネルギー / アンモニア燃料 / カーボンフリー燃料 / 炭素循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、喫緊の環境イシューである地球温暖化問題解決のために必要な温室効果ガス削減を実現する上で重要な概念である「カーボンニュートラル」(炭素循環)獲得を考慮した次世代エネルギー技術を教育現場で実践・実感できるエネルギー教材を新たに開発することである。 成果の1点目としてメタンハイドレートの教材化に向け簡便かつ安価に生成する方法の開発と改良を行った。メタンガス(天然ガス)は、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の20倍以上の温室効果がある物質であり、燃焼させ二酸化炭素に変換することで、温室効果を20分の1に減少させることが出来る。メタンハイドレート合成には設備の整った研究機関にあるような大掛かりな装置が必要であった。この課題を解決するため、本研究室では簡便な生成方法の開発を行ってきた。本年度は、従来法に実験条件や実験操作を検討することで、高い再現性でメタンハイドレートを90分以内という短時間で合成する方法を開発した。またこの教材を用いて、高等学校において授業実践も行い、教育現場への導入の検証も行った。 二つ目の成果として、クリーンなエネルギーとして利用が進められている「水素」製造の教材化である。水素は、将来的には太陽光発電などを利用した水の電気分解での製造が主流の供給方法として研究されている。しかし電気利用による水素の製造は、コスト的・エネルギー的に効率が悪く、現在はメタンと水からの水蒸気改質という方法で製造されている。この水蒸気改質の教材化に成功した。 三つ目として次世代燃料として近年開発が進んでいる「アンモニア」の教材を開発した。発電などの燃料として、アンモニアが注目されるメリットを、液化・運搬という観点から学習できる教材を考案した。またアンモニアが燃料として利用できることを実感できる実験条件と実験方法を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の成果としては、計画以上の進度で進められたと考えている。根拠として、先ずはメタンハイドレートの教材化であるが、本研究室では簡易で短時間の合成方法を開発しており、その時間は4時間半程度であった。しかし今回は、その実験手順や実験条件を検討することで、90分以内という時間まで短縮することが出来た。この90分以内であれば、学校教育現場においても連続した2授業時間以内に実験を完了させることが出来ることを意味し、普及へ向けて大きな前進である。またコロナ禍が継続していたため、この教材を用いた教育現場での授業実践における検証は今年度は困難であり、次年度以降と想定していた。しかしコロナ禍の世界的な収束と対策が進められた結果、前倒しでの授業実践を複数回行うことが出来たのも大きな進捗であった。 次にカーボンニュートラル実現のためカーボンフリーな燃料として注目されている「水素」と「アンモニア」についてである。この新エネルギーに関しては、研究計画を立て採択後に、戦争によるエネルギー供給不安などから2022年4月以降に世界的に注目を集めている。この研究の目的である最新の科学技術を実感できる実験教材の開発という理念に適した実験の開発に成功することが出来た。水素については、電気分解ではなく、水蒸気改質という方法で供給されていることを実感出来る教材の開発と、アンモニアに関してはそのメリットである物性と燃料として機能性の確認が出来る教授方法の開発も達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)メタンハイドレートの教材化においては、高い再現性は得られているが、失敗することなく確実に合成できる実験方法の更なる検討を行う。またこの教材を用いた授業実践を進め検証を行い、教育現場でも活用できるような教材へのブラッシュアップを図る。 2)カーボンニュートラル(炭素循環)が実感できるバイオ燃料の教材開発を行う。既に糖含有植物でありエネルギー作物であるスイートソルガムを素材としたバイオエタノールとしての研究は開発しているが、この得られたバイオエタノールのエネルギー教材として適したエネルギー変換方法の教材化を進める。 3)クリーンなエネルギーとしての「水素」の教材開発を進める。現在は、現状の主な製造方法・供給方法である水蒸気改質の教材化へ実験室レベルでの実験方法は見いだせたが、教育現場での実践レベルまではまだ課題も多く、その改良・克服に努める。また水素発酵によるバイオ水素の生成という最新の科学技術を実感できる実験方法の開発も進める。 4)カーボンフリー燃料として注目をされている「アンモニア」の物性と燃料として性能についての教材化を進める。これも実験室レベルでは実現できているが、教育現場での活用には、化学物質としての安全性や燃焼実験での安全性など解決すべき課題があるので、その解決を図る。
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Causes of Carryover |
申請書作成時、設備備品費として計上していた高圧反応装置であるが、採択結果通達の前に幸いにも他の予算により購入・準備が出来て、この予算での購入する必要がなくなったため。 翌年度の使用計画としては、研究進捗が予定よりも早く進んでおり、その成果発表のための旅費の増加分、および教育現場での実践活動もコロナ禍が収束して実施出来るようになってきたため予定より進んでいる教材の実践活動旅費の増加分として利用する計画である。
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