2022 Fiscal Year Research-status Report
Curriculum and Learning Environment for dealing with Difficult History
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22K02537
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
空 健太 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター研究開発部, 教育課程調査官 (30548285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原口 友輝 中京大学, 教養教育研究院, 教授 (70630995)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 困難な歴史 / 社会的な責任 / 倫理的判断 / カリキュラム / 歴史教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「困難な歴史(Difficult Histories,Difficult Past)」を歴史の教室で効果的かつ安全に扱う方法を明らかにすることである。「効果的かつ安全に」とは、「困難な歴史」をどのように扱うことが歴史教育の改革につながるかを明らかにするとともに、教師が「困難な歴史」を歴史の教室で扱う際の学習環境のデザインや指導上の留意点を明らかにすることを意図している。 第一年次は、「「困難な歴史」を実践する上で、どのようなカリキュラムを想定することができるのか」について探求した。先行する研究で、米国の非営利組織であるFacing History and Ourselves(FHAO)のカリキュラムが「困難な歴史」を扱うカリキュラムの一例であることを踏まえ、それとは異なるカリキュラムの事例を考察するため、米国の社会科の目標の一つである「社会的責任(social responsibility)」の育成を意図した教材(「民主的価値の推論2.0(Reasoning with Democratic Values 2.0)」)を分析した。 分析した教材の特徴は次のようなものである。目標原理として、歴史教育における社会的責任の育成、具体的には倫理的な判断力の育成が設定されている。内容構成原理として、現在のアメリカ合衆国の民主主義における重要な価値として、権威、共通善、多様性、平等、自由、生命、忠誠、契約の履行、所有、真実を挙げ、それらの価値を含んだ歴史事例を扱っている。学習の構成原理として、歴史事例に含まれた価値に気付かせ、エピソードで語られる事実を踏まえて提示される生徒の倫理的推論(判断)を求める問いについて判断とその理由を考察し、それについて議論することを通して、生徒自身の価値を自覚・内省させ、異なる歴史事例の概念化や、仮説の検証によって深めていく構成をとっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
共同研究者との毎月の定期的なミーティングに基づき、申請時の研究計画の順序を修正し、第一年次はカリキュラムの収集や分析を行った。2つ程度分析する計画であったものの、分析したカリキュラムが1つに留まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
「困難な歴史」に関わるキーワード(例えば、倫理的判断など)を選定し、それらに関する先行研究の整理と分析を行うとともに、キーワードに関連するカリキュラムの収集、分析を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、R4(2022)年度に計画していた外国旅費や人件費・謝金を使用しておらず、また共同研究者とのミーティングや学会もオンライン参加で行ったため、移動や宿泊に係る費用が発生していないためである。特に金額の大きい外国旅費については、R4年度がコロナ禍で海外渡航を控えるべき状況であると判断し、元々の研究計画を年度当初時点で修正した。使用計画としては、R5(2023)年度だけでなく、海外渡航を予定していなかったR6(2024)年度にも海外調査を行う予定である。
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Research Products
(1 results)