2022 Fiscal Year Research-status Report
源氏物語絵巻の詞書(ことばがき)と絵を活用した古典指導プログラムの開発
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22K02560
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Research Institution | Chubu Gakuin University |
Principal Investigator |
山田 丈美 中部学院大学, 教育学部, 教授 (50454301)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 古典教育 / 源氏物語絵巻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代に生きる私たちと古典とのかかわり方を問い直し、古典の絵画と言葉により思考力と表現力の相互育成をめざした古典教育の指導プログラムを開発することを目的とする。具体的には、国宝源氏物語絵巻の詞書(ことばがき)と絵画部分とを関係づけたり、他の屏風絵・扇面図・画帖等と比較対照したりすることにより、視覚的イメージと言語的イメージによる構造的な思考および表現へと発展させていく。 2023年度の成果としては、源氏物語絵巻の詞書と絵を活用した古典指導の調査研究を実施し、その結果を全国大学国語教育学会で口頭発表するとともに、中部学院大学・中部学院大学短期大学部研究紀要第24号に「源氏物語絵巻の詞書と絵画を活かした古典指導の研究―「橋姫」の場面を中心にして―」をタイトルとする研究ノートを掲載することができた。 研究内容として、まず、言語による文学性と絵画による文学性について先行研究を整理したうえで、新たに、絵巻の文学性について追究した。さらに、国宝源氏物語絵巻の「橋姫」の場面の詞書・口語訳・絵画の三つの素材に対する大学生の記述内容を分析し、絵画により視覚に訴える古典指導の効果検証を行った。その結果から、源氏物語絵巻の詞書と絵画の相互活用による文学性および人物理解における有効性が示唆された。 一方、国宝源氏物語以外の源氏絵についてもリサーチし、今後の研究に生かす素材について見聞を深めることができた。紫式部が源氏物語の構想を練ったとされている石山寺で行われた春季石山寺と紫式部展「源氏物語と女君」を参観した。平安時代・室町時代・江戸時代の重要文化財を含む絵巻・絵図が多く展示されており、それを間近に見ることができた。また、久保惣記念博物館では、重要文化財の桃山時代の絵師 土佐光吉の作が特別展示され、源氏物語の場面の精緻な絵画を見ることができた。ここで得た知見を今後の研究に役立てていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
源氏物語絵巻や古典教育に関する資料を集め、実際に国宝や重要文化財を目にする機会を得て見聞を深める一方、源氏物語絵巻の詞書と絵を活用した古典指導プログラムの一例目を学会発表し論文としてまとめて公表することができた。そのため、研究1年目の成果としてはおおむね順調であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究に関する資料を引き続き収集し、それをもとに、本研究の位置づけと意義を確かなものにしていきたい。 また、源氏物語絵巻の詞書と絵を活用した古典指導プログラムの具体例をさらに考案・検討し、提案していきたい。源氏物語絵巻の様々な場面について考案した指導例の有効性に関する調査を行うとともに、より効果的な指導方法を検討していく。実施した研究の成果をその都度まとめ、学会発表や論文発表により積極的に公表していきたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた初年次のパソコンの購入の準備が遅れ、年度内に未購入となった状況が挙げられる。また、東京への資料収集を6回予定していたが、コロナ禍により出張を控えたことにより、実質の使用額が予定より低くなった。 令和5年度にパソコンを購入予定であり、コロナの位置づけも変化したことから資料収集のための出張も積極的に行いたい。 また、令和5年度は前年度分からの繰り越し分と合わせ、研究必要な図書の購入も行っていく。
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