2023 Fiscal Year Research-status Report
ワーキングメモリ理論に基づく科学的探究課題の開発とパッケージ化
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22K02577
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
草場 実 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (00737851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 勇希 秋田大学, 教育文化学部, 講師 (40883426)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 理科教育 / 観察・実験 / 科学的探究課題 / メタ認知 / 動機づけ / 学習方略 / ワーキングメモリ / 社会的相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、観察・実験を通した科学的探究活動において、ワーキングメモリ(WM)理論に基づき、生徒がメタ認知の活性化によって動機づけや学習方略を自己調整しながら解決するための科学的探究課題を開発し、その教育的効果について実践的に検証することである。なお、本研究におけるWM理論とは、「生徒がWMへの負荷を低減することで新たな認知的資源を生み出し、それをメタ認知に利用すること」とする。その目的の実現に向けて、当該年度(2年目/4年間計画)は、【実績1】WM理論に基づく科学的探究課題の開発と授業実践、【実績2】理科教育研究における社会的相互作用の研究成果・動向の整理、を中心に行った。 具体的に、【実績1】では、高等学校理科の化学「(2)物質の変化と平衡 イ 化学反応と化学平衡 (ア)反応速度」の内容に準拠した科学的探究課題を開発し、次の4つのステップ(STEP1:科学的探究(反応速度)に関する知識・技能の習得→STEP2:理解確認探究課題(過酸化水素の分解速度と濃度との関係)の解決→STEP3:理解深化探究課題(反応速度定数と温度との関係)の解決→STEP4:自己・相互評価による省察)で授業実践を行った。その結果、特にSTEP3の場面において、生徒はメタ認知の活性化によって、実験の計画や方法を修正する行動が観察された。【実績2】では、1年目から継続して、理科教育研究における「対話的な学び」に着目し、その研究成果・動向のレビューを行った。その結果、理科教育学領域には思考力・判断力・表現力等の資質・能力の育成を目的とした「対話的な学び」の実践研究が多く蓄積されていること、などを示した。 当該年度の研究成果は、【実績1】は理科教育学会において口頭発表され、【実践2】は理科教育学研究(学術誌)において発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間(4年間)通して、本研究課題の目的を実現するために、次の到達目標を設定している。【目標1】中等理科教育において、WM理論に基づく理科学習指導デザインを開発する。【目標2】学習指導要領の目標と内容に準拠した科学的探究課題とその教育的評価指標を開発し、その教育的効果について実践的に検証する。【目標3】科学的探究課題の実践事例を蓄積・整理・発信し、その普及を図る。なお、(目標1)は研究期間1年目に、(目標2)は研究期間2・3年目に、(目標3)は研究3・4年目を中心に遂行し、到達することを目指している。 現在までの研究成果は次の通りである(1年目の研究成果1~3は省略)。(成果4)高等学校理科において、学習指導要領の目標と内容に準拠した科学的探究課題(2課題)を開発し、その教育的効果について授業実践を通して検証することができた。 本目標と現在までの研究成果を照らし合わせると、(目標1)と(目標2)は順調に達成できているため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(3年目/4年間計画)は、現在までの研究成果を踏まえて、(目標2・3)を中心的に遂行し、その到達を目指していく。具体的に、学習指導要領の目標と内容に準拠した科学的探究課題(理解確認探究課題と理解深化探究課題)とその教育的評価指標の事例開発(パッケージ化)を遂行していく。実践事例は、中学校及び高等学校理科の複数の単元において開発することで、(目標3)の到達を目指す。並行して、生徒のWM、メタ認知、動機づけ、学習方略、科学的探究成果に関するデータ収集を行い、それらの変数の関係をモデル化し、理科学習指導デザインの精緻化を図ることで、(目標1)の高水準の到達を目指していく。なお、本研究を効率的・効果的に進めていくために、これまでに研究体制を構築してきた学校現場やSSH指定校との連携を引き続き、維持・発展させていく
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Causes of Carryover |
購入予定の消耗品が割安で購入し節約ができたため。次年度の購入予定の消耗品に割り当てる。
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