2022 Fiscal Year Research-status Report
音楽科における「伝統」観の再考―ブータンのヘリテージ・エデュケーションを参照して
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22K02602
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
権藤 敦子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (70289247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊野 義博 新潟大学, 人文社会科学系, フェロー (60242393)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 伝統 / 音楽 / ブータン / 学校教育 / ヘリテージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,「伝統」観の捉え直しに関する理論的な考察を深め,思考の枠組を構築するという方向性のもと,ブータンにおける伝統音楽観,新しい方向性を参照することで知の在り方の複数性を掘り起こし,日本の音楽科教育における固定化した「伝統」観を更新し,今後の教育課程,教育内容の指針を提案することをめざして初年度の研究に着手した。 2022年度は,新型コロナウイルス感染症の影響が大きく,海外渡航への制限もあったため,まず,ブータンのヘリテージ・エデュケーション職能開発センターとの定期的なミーティングの開催を継続的に行い,情報交換と研究遂行に向けた協議を行った。続いて,王立ブータン大学パロ教育カレッジからの招聘があり,9月に研究分担者と研究協力者はブータンに訪問,授業研究,授業開発,音楽調査,インタビュー調査,教材研究を行い,ヘリテージ・エデュケーション職能開発センターにおける口頭発表及びブータン側と共同でのジョイントセミナーを開催した。12月にはブータン側から日本への訪問を行い,東京音楽大学,新潟大学及びその附属学校における情報収集,日本における伝統文化事業,学校教育,教育課程等の調査を行い,研究会を行った。また,日本音楽教育学会第53回大会(オンライン,国立音楽大学主催)において「音楽教育における『伝統』観の再考―伝統音楽の捉え方への問題提起―」の口頭発表,日本民俗音楽学会第35回大会(於 鎌倉女子大学)において「ブータンの土壁つくりうたパチの教材化―授業実践を通して民謡学習の未来を考える―」の口頭発表を行い,現在までの進捗状況を公表した。さらに,10月と3月に行ったブータンと日本の小学校における遠隔システムによる交流授業と授業研究をふまえ,児童の発言や記述に基づく異なる文化における伝統の捉えを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,当初オンラインのみのコミュニケーションであったが,夏以降,ブータン側,日本側とも,相互に行き来を行い,共同研究を順調に開始することができた。同時に,オンラインによる会議を年間通して継続的に行うことで,ブータンにおけるヘリテージ・エデュケーション職能開発センターでの取組について情報共有しながら,研究を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の実施計画のうち,ヘリテージ・エデュケーション職能開発センターにおける伝統音楽の教育実践への取組に参与・協働する,という点で今年度は大きな進捗があった。次年度は,ブータン・日本共同執筆による研究報告書を作成してブータンで公表するとともに,ブータンにおける実践開発をさらに進める。具体的には,フィールド調査での民俗音楽の把握を継続するとともに,教材開発,授業開発とともにカリキュラムの共同開発を行い,伝統観について考察する。日本の学校音楽教育調査,理論研究については,今年度の学会発表で整理をした内容を深化させ,日本の音楽教育史における伝統観及び文化人類学における伝統観について,学校音楽教育との関連を踏まえた研究を行う。なお,定期的なZoomによるミーティングでブータン側との共同研究協議を続けるとともに,日本側から8月下旬にパロ教育カレッジを訪問し,対面での共同研究,共同調査を実施する予定である。また,その成果に基づき,今年度の発展として,日本音楽教育学会第54回大会での発表を行い,研究の中間報告と次年度の方向性を策定する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響もあり,研究代表者の渡航が難しかったため,生じた次年度使用額については次年度の渡航に際して使用することとなった。
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Research Products
(13 results)