2022 Fiscal Year Research-status Report
小中学校のライティング指導におけるオーサーシップ育成のための基礎的研究
Project/Area Number |
22K02655
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
小林 一貴 岐阜大学, 教育学部, 教授 (30345772)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | オーサーシップ / アカデミック・リテラシー / ジャンル / 表現への関与の様式 / 混成的談話実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題の1である「ライティング指導における情報・知識の評価と再構成のプロセス」に関わって、オーサーシップは先行する知識や知識を生み出す諸活動との結び目(nexus)において構築されるとの考え方に基づき、初等教育における書くことの学習過程の分析と考察を行った。 初等教育におけるオーサーシップの育成に関しては、学校教育に特有の言語を身につけながら、教材ならびに学習場面の参加者との相互関係のプロセスにおいて、書き手が自身の書くことに関わる認識を習得することが重要となる。このプロセスを捕捉するために、書かれたテクストの要素と教材を介したテクスト間の相互関係、学習場面における参加者の相互関係を記述する方法として「混成的談話実践」を検討した。 この記述方法に基づいて、小学校低学年における物語を書くことの学習過程の分析を行った。分析を通して、指導内容に沿った物語の構成や語り手の存在といったテクストの形式的特徴が授業者や他の学習者とのやりとり、授業における課題や資料との相互関連、ストーリーや物語世界の象徴性などと関連していることを明らかにした。そこには書かれたテクストに参加する立場と、書かれたテクストに関わるコミュニケーションに参加する立場が関わっていることを確認した。 また、教材化に関わる観点から、学習者にとって有意味と思われていたテクストの意味が解体され、再構築される過程に焦点を当てた授業実践について、表現学習の過程を考察した。学習者が書かれたテクストの生成される状況の具体化を行っていること、学習の対象となるジャンルについて、他のジャンルとの混交によって意味づけが展開していることを指摘した。 テクストならびに状況の諸要因との相互関係において学習者にとっての固有の書くことを補足する枠組みを提示し、これらのプロセスへの関与がオーサーシップの育成に関する要因となることを指摘した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は初等教育、中等教育前期を対象としており、初年度においては後半に中等教育での学習過程の調査を計画していたが、研究代表者の事情により計画を予定通りに進められず、授業実践者との学習ならびに研究のデザインに関する協議を十分に行なえなかった。また、書くことのジャンルについては、初等教育におけるフィクションに限られている。このように、中等教育ならびにノンフィクションのジャンルについての学習過程の調査についてやや遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度末までに、初等教育における議論的なジャンルに関する授業実践を行い、前年度の成果に基づく学習過程の記述を通した分析・考察を行う。また、中等教育においては、同様に議論的なジャンルに関する授業実践と学習過程の調査を行う。 授業実践については、学習者同士の交流や発表の談話、書かれたテクストについてデータを収集する。 調査データをトランスクライブ(文字化)し、情報・知識の評価と再構成、知識の創出、オーサーシップの意識化に関わる学習過程に特有のメタ言語を抽出する。
|
Causes of Carryover |
物語を書くことの学習過程のデータ入力と確認の作業を研究代表者が行ったため、作業に伴う謝金が発生しなかった。
|