2022 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the neurological recovery mechanism of serious juvenile delinquents and evaluation of the effects of correctional education
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22K02744
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
松浦 直己 三重大学, 教育学部, 教授 (20452518)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 児童自立支援施設 / 非行 / 発達障害 / 被虐待 / 矯正教育 / 効果評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、対象児を入所時と退所時にMRIで評価し(抑うつ尺度や自尊感情尺度など、多様な行動・心理尺度評価と組み合わせる)、深刻な被虐待経験を有する非行少年の神経学的リカバリーメカニズムを解明することであり、矯正教育効果を検証することである。研究対象施設である神戸市立若葉学園は児童自立支援施設である。入所者の多くは何らかの精神障害や発達障害を有していることが多く、児童期の被虐待経験も深刻な状態である。調査施設は夫婦小舎制を採用している。夫婦小舎制とは深刻に非行化した少年らを疑似家族的環境で再教育することにより、非行性の除去や様々な対人関係スキルを構築させることを目指している。本年度はこの児童自立支援施設の構造化について研究を進めた。対応の難しい子ども達に適切な教育を提供するためには、教育環境の構造化をどのように進めるかが重要である。構造化は2つの軸で説明できる。1つは「厳守すべきルールの透明度」で、もう一つは「やるべきことの明瞭度」夫婦小舎制では、教育環境の構造化のカギを握るのは夫婦である寮長と寮母である。交替制の施設と比較すると、夫婦小舎制では、入所対象児に対してこの2つの軸の到達度や達成度を明瞭に示すことが容易かつ簡便であることが示唆された。この成果は決定的に重要であると思われた。なぜなら、構造化の水準を高く設定することこそが教育効果を高めることにつながることである。今後はこのモデルが本施設のみならず、他の児童自立支援施設、そして他の教育環境(少年院や学校教育)でも応用可能かを検証する必要がある調査では協力施設である神戸市立若葉学園の協力を得て、順調に対象者に研究協力を依頼し、心理検査等実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心理尺度については、概ね順調に評価し蓄積できている。若葉学園のみならず、他の児童自立支援施設のデータも蓄積しつつあり、1年後には他の施設との比較や評価が可能となる。同様の研究を進める他の研究者らとも、共同して進める研究が存在し、彼らと協働しながら、本研究目的に解明を進めている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は3年計画の2年目であり、堅実にデータ収集を行いつつ、分析や研究発表を実施する予定である。また得られたデータの分析からの知見は、児童自立支援施設での研修や、他の司法矯正関係施設(少年鑑別所、家庭裁判所)での講義でも広く周知し活用していく予定である。
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Causes of Carryover |
令和4年度中もコロナウイルス感染症の拡大や全世界的パンデミックが収束しておらず、必要な出張ができなかった。また海外での情報収集や国際学会発表も不可能となった。さらには、研究者自身が所属先の附属小学校校長や附属学校園統括担当の特命副学長など、大学の管理面の仕事が増えたことにより、研究に割ける時間が物理的に減少してしまった。 令和5年度には現地調査を増やすこととし、関係施設でのコミュニケーションを密接にとっていく。さらに国際学会で研究結果やその分析結果を報告していく。
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