2022 Fiscal Year Research-status Report
遠隔ディスカッション能力の熟達化過程に基づいた適応的グラウンド・ルールの開発
Project/Area Number |
22K02849
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
中野 美香 福岡工業大学, 教養力育成センター, 教授 (60452819)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 遠隔ディスカッション / グラウンドルール / コミュニケーション能力 / 熟達化過程 / 高等教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,遠隔ディスカッション能力の熟達化過程の解明および適応的グラウンド・ルール(GR)の開発である。GRは会議や話し合いをおこなう際に設定するルールや方針のことで,「相互の主張や発話内容,発話の意図を正確に理解するために厳密な言語学的知識に加えて,会話の参加者が保持している事が必要となる,ひと揃いの暗黙の理解」(Edwards & Mercer,1987;松尾・丸野,2008)を指す。本研究では,社会の発展を推進する人材として期待されるという理由から,大学生を対象とした遠隔ディスカッション能力を向上させる研究に取り組むこととした。 本研究は1年間の大学生の遠隔ディスカッション能力の熟達化過程を短期・中期・長期のスパンに分け,実験・観察によるアプローチで明らかにする。R4年度はデータ収集を目的として、対面のグループ・ディスカッションを対象に短期・中期の実験・観察および質問紙・面接調査を実施し、「やりづらさ」の特定と共に,熟達化の阻害/促進要因を検討した。具体的には、4名程度で構成される短期・中期のグループ・ディスカッションの実験を自由設定条件で実施した。自由設定条件とはGRを指定せずに、グループで議論をしてルールを設定してもらうものである。この実験により、GR自由設定条件下で初心者の大学生がどのようなGRを設定するか、その傾向と問題を明らかにするためのデータを収集できた。またGDの様子を参与観察し、GRの作成過程およびその後のディスカッションの質と関連付けて分析するためのデータを収集した。実験・観察に参加した大学生のうち、同意が得られた協力者に質問紙調査および面接調査を実施し、設定したGRの効果や「やりづらさ」について明らかにすると共に、学生の視点からGRの設定方法や導入方法について意見を聴取した。以上の研究により、分析・開発の基礎となるデータを収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R4は感染対策による遠隔講義の実施が落ち着いたことから、遠隔ディスカッション能力育成の基礎となる対面のグループ・ディスカッションを対象にしたGRのデータを重点的に収集した。当初の計画通り、R4年度はデータ収集のために対面のグループ・ディスカッションを対象に短期・中期の実験・観察および質問紙・面接調査を実施し、「やりづらさ」の特定と共に,熟達化の阻害/促進要因を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
R5は新型コロナウィルス感染症が5類感染症に移行したことにより、学校現場では感染対策のための遠隔講義の実施は減っている。しかし、遠隔ディスカッション能力はこれからも重要であり続けると考えられるため、対面でも遠隔でも状況に応じて対応できるような汎用的なグループ・ディスカッション能力を育成するためのGRの開発を進めていく。R5はR4で得られたデータより対面GRモデルを開発し、遠隔ディスカッションの実験を通して遠隔GRモデルを開発する。
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Causes of Carryover |
学会や研究会がオンライン実施になったため、旅費を使用しなかった。また、対面の講義で実施したグループ・ディスカッションで実験・調査をおこなうことができ、参加者への謝金を必要としなかった。 R4は、責任者を務めるR5からのカリキュラム改正の準備と重なったことで研究の遂行が一時的に困難になった。そのため、R4はデータ収集を優先させ、人件費・その他の支出を伴う分析はR5に実施することとした。
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Research Products
(1 results)