2022 Fiscal Year Research-status Report
Learning by preparing pedagogical questions
Project/Area Number |
22K03077
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小林 敬一 静岡大学, 教育学部, 教授 (90313923)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 教授準備による学習 / 教授的質問 / 質問生成 / 質問予想 / 教授による学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は次の通りである。 (1)教授的質問生成の学習効果:本研究課題で提案した質問仮説に基づき,教授的質問を準備することが学習を促進するか明らかにする実験を,大学生180名を対象に実施した。実験の結果,学習材を学習してから教授的質問を生成した群は,理解モニタリングで他の二群より優れていたものの,学習材の理解成績に関して,(学習材に関する)自己質問を生成した群と有意差がなく,また教授的説明を生成した群より劣っていた。これらの知見は,(教授的質問を生成することに関する)質問仮説の主張と一致しなかった。以上の実験結果を論文にまとめ,教育学部研究報告(紀要)に投稿し掲載された。 (2)教える相手の疑問や質問を予想して教授準備することの学習効果:(1)を踏まえて,教授的質問を生成するのではなく,教授内容に関して教える相手がどのような疑問を抱き質問してくるかをまず予想し,その予想に基づいて教授準備をすることの効果を調べるために,大学生88名を対象にした実験を実施した。 (3)教授・教授準備による学習の理論的検討:本研究課題の土台となる教授・教授準備による学習の理論的検討をおこなった。具体的には,教授が学習効果を発揮する理由を明らかにする上で重要な,教材を準備することによる学習に関して最近,発表されたRibosa & Duran (2022)のメタ分析研究を批判的に検討する研究を実施した。この研究の結果を論文にして,国際誌Frontiers in Psychologyに投稿し,受理された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「おおむね順調に進展している」と判断したのは,次の理由による。 (1)研究実施計画に基づき,教授的質問を生成することが学習に及ぼす効果に関する実験研究を実施し,その研究成果を論文としてまとめることができた。 (2)当初の質問仮説を修正し,教える相手の疑問や質問を予想して教授準備することが学習に及ぼす可能性を新たに考え,その可能性を検証する実験を実施し,必要なデータを得ることができた。 (3)教授・教授準備による学習の理論的検討を進め,その研究成果を論文としてまとめることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として,次の3点が挙げられる。 (1)教える相手の疑問や質問を予想して教授準備することの学習効果を検証する実験で得られたデータを詳細に分析し,教授準備の前に疑問・質問を予想するステップを加えることで教授準備の学習効果を高めることができるかどうか探る。また,必要に応じて,追加の実験を行い,学習効果の背後にある心的メカニズムや境界条件を探る。 (2)教授的質問生成の学習効果を検討した実験の結果を詳細に分析した結果,多くの実験参加者が適切な教授的質問を生成することに困難を感じていることが示唆された。この示唆は質問仮説の問題点や限界を理解する上で重要な鍵となることが予想されることから,教授的質問生成が困難な理由について明らかにする,さらなる実験や調査を実施する。 (3)教授・教授準備による学習の理論的検討から,研究領域の土台となる理論的基盤が不十分であることが示唆された。それを踏まえて,今年度に引き続き,来年度以降も理論的検討を進めていく。
|