2023 Fiscal Year Research-status Report
超早期認知症ステージング診断と鑑別のための新たな神経心理検査バッテリー開発
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22K03164
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
小久保 奈緒美 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 脳機能イメージング研究センター, 研究員 (40392451)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 認知症 / 神経心理 / 神経イメージング / バイオマーカー / 早期診断 / 機械学習 / プラットフォーム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、アルツハイマー病の他にもパーキンソン病や多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、前頭側頭葉変性症など、幅広いプロテイノパチーを対象に神経イメージング(MRI, PET)と血液バイオマーカー、神経心理検査データを収集し、縦断評価と横断評価を活用して昨年度までに構造化したデータとの統合を行なった。特に、本年度はQSTが世界に先駆けて開発したαシヌクレイン-PETトレーサーを用いてαシヌクレイン病理群の神経心理学的特徴にかかる検討が進んだことが、特筆すべき成果である(Endo et al., 2024)。はじめにPET生前病理診断に基づき背景病理をアミロイド病理群、タウ病理群、αシヌクレイン病理群、及びそれらの混合病理群で分類し、つぎに認知および生活機能から重症度評価を行い、背景病理と重症度別に神経心理学的特徴と縦断変化を検討した。 また、今年度は未病期(前変性、前駆状態)認知症からの神経心理学的特徴を把握するため、申請者らが開発した高齢者不安尺度“Geriatric Anxiety Scale: GAS日本語版"(Kahimura et al., 2023)や主観的認知機能尺度(Cognitive Function Index)、アイトラッキングを用いて心理行動学的バイオマーカーを重点的に収集した。今年度までの縦断評価では、主観的認知機能尺度は前駆期から軽度認知障害への移行期において、有用な評価尺度となり得ることが示唆された。一方、アイトラッキングデータは、記憶以外の認知機能ドメイン病態を主体とする患者群において、認知機能低下の客観的な裏付けとなり得ることが示唆された。 今後は、未病期からの長期ステージングを見据えて遠隔神経心理検査等も活用して更に質の高いデータを収集し、新たな認知症診断アルゴリズム開発のための神経心理学検査プラットフォーム構築を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、(1)QST独自の次世代タウリガンドを用いた生前PET診断がついた症例および健常成人のデータを用いて新たな認知症診断アルゴリズム開発のための神経心理学検査プラットフォームを構築すること、(2)機械学習を用いてマルチモダル特徴量から認知症疾患における疾患特異的心理・行動指標を同定し、神経心理学検査による超早期認知症診断および鑑別法を開発することである。方略として、本計画で2年目以降はPET生前病理診断がついた患者と健常群のデータプラットフォーム構築に加え、マルチモダル検査バッテリーを開発することとした。特に、申請者が強みとするデジタル神経心理指標の活用により、従来スクリーニング検査では鑑別が困難だった非典型AD疾患のごく初期における心理行動学的特徴について検討した。 本年度は、その計画に沿ってこれまで国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)で蓄積してきたアミロイド病理やタウ病理を背景に持つ認知症患者群に加え、αシヌクレイン病理を背景に持つ患者群の神経画像および神経心理データを集約し、構造化と解析を行なった。また、早期診断のための新たな心理行動学的モダリティとして眼球運動や四肢の運動に着目して画像データを収集し、予備解析を行なった。 現在、本年度予定症例数のデータ収集が概ね完了し、臨床応用可能な検査バッテリー構築と機械学習に向けて多施設データの集約と構造化を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画における2,3年目の目標は、神経心理学検査プラットフォームを構築し、新規・縦断データを継続的に蓄積、適切な管理体制のもと運用していくことである。今年度は、認知症疾患患者群と健常群に加え、新たに多様なプロテイノパチー患者群について認知機能正常期から神経イメージングや血液等の各種バイオマーカー、包括的神経心理検査データを予定症例数に準じて収集し、概ね順調に計画を進めることが出来た。特に、多施設で各施設の強みを生かしたデータ収集が推進されたことで、今後の深度ある研究推進に向けて課題が明確になった。 本研究の最大の強みは、各種神経イメージングと血液バイオマーカーを用いて生前病理診断がついた患者群の包括的神経心理検査データを収集し、解析できることである。また、多施設データ収集の基盤は、QSTを中心に構築した多施設連携プラットフォーム(Multicenter Alliance for Brain Biomarkers: MABB)である。これまでの研究で、未病期から早期にかけての僅かな認知機能変化の検出には主観的認知機能尺度(Cognitive Function Index: CFI)や高齢者不安尺度(Geriatric Anxiety Scale: GAS)、眼球運動をはじめとするデジタル行動指標が有用であることが示唆された。近年、未病期から早期の患者について質が高いデータ収集を進めるために、被験者の日常生活下で評価を行う等、生態学的妥当性を確保する試みに関心が集まっている。そこで今後の研究推進の方策として、遠隔でのデジタル神経心理検査を活用して早期ステージングデータ収集を促進する。これにより、さらに実施可能性と判別性能が高い超早期診断のためのスクリーニングバッテリー開発を目指す。
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Causes of Carryover |
昨年度中に成果発表を予定していたが、国際学会での発表と論文投稿が今年度に変更(継続中)になったため次年度使用額が発生した。このため、雑誌論文投稿費と国際学会参加のための旅費の一部として使用する。
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Research Products
(2 results)