2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K03207
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
池上 将永 旭川医科大学, 医学部, 教授 (20322919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 雅治 旭川医科大学, 医学部, 名誉教授 (80183060)
空間 美智子 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 准教授 (00623406)
片山 綾 大阪城南女子短期大学, 総合保育学科, 講師 (30881106)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 衝動性 / 遅延割引 / 注意欠如・多動症 |
Outline of Annual Research Achievements |
衝動性(impulsivity)は、注意欠如・多動症(ADHD)等の病態理解において中核となる心理学的概念である。衝動性は多次元的な心理・行動特性であり、個人の衝動性を正確に把握するためには、各次元に対応した行動課題を用いる必要がある。本研究は、衝動性を構成する複数の次元を評価する包括的なテストバッテリー(多次元衝動性検査)を開発することを目的としている。 2023年度の前半において、複数の衝動性次元を含むテストバッテリーを作成し、非臨床群(健常大学生)を対象とした検討を行った。テストバッテリーには、新たに作成した短縮版の遅延割引検査(5-trial adjusting task)が含まれていた。非臨床群を対象とした実験において、まず短縮版の遅延割引検査(5-trial adjusting task)の妥当性を検討した。その結果、短縮版の遅延割引検査が従来版と十分な相関を持ち、かつ、その他の衝動性指標と有意な相関を持つことを確認した。また、テストバッテリーのスコアに基づいた因子分析の結果、ワーキングメモリとプランニング、遅延割引と遅延嫌悪、尚早運動反応の3因子が抽出され、テストバッテリーがADHDに関わる認知特性および複数の衝動性次元をカバーしていることが確認された。さらに構造方程式モデリングの結果から、遅延割引率の高さが成人ADHDスクリーニング質問紙(ASRS)得点に有意な影響を与えている可能性が示唆された。 2023年度の後半からはADHD児を対象としたテストバッテリーの臨床的有用性に関する検討を開始した。今後、例数を増やしつつ、テストバッテリーのスコア、養育者による実行機能評価尺度(BRIEF-P)、およびADHD臨床尺度の間の関連性を検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の計画として、衝動性を多次元的に測定するテストバッテリーを作成し、その因子構造を確認することが予定されていた。また、短縮版遅延割引検査の作成と妥当性の確認が予定されていた。これらの目標は概ね達成され、結果は2024年に開催される学会で発表する予定となっている。 上記と並行して、ADHD児を対象とした臨床的研究の開始が予定されていた。ADHD児を対象とした検討から、テストバッテリーがADHD児に対しても実施可能であることが確認された。例数が未だ目標に到達していないため今後の進捗に注意する必要はあるが、全般的に当初の研究計画通りに進めることが出来た。 以上から、現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、ADHD児を対象として、多次元衝動性検査の臨床的有用性に関する検討をさらに進めていく予定である。テストバッテリーのスコア、養育者による実行機能評価尺度(BRIEF-P)、およびADHD臨床尺度の関連性を詳細に検討できるように実験参加者を目標数までを増やしていく。得られた結果は、学会や学術雑誌で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
実験制御、データの保存、およびデータ解析に使用するためのノート型パーソナルコンピュータおよびタブレット型コンピュータ(iPad)を購入する計画であったが、学術雑誌掲載費等の必要経費が生じたため2023年度はこれらの購入を見送り、現有の装置で環境を構築して研究を進めた。今後、必要に応じて実験環境が拡張される可能性があるため、次年度に残額を繰り越してこれらの購入費用として使用する計画である。
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