2023 Fiscal Year Research-status Report
p進微分方程式の解の対数的増大度を駆使した数論幾何学における新手法
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22K03227
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大久保 俊 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 講師 (20755160)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | p進微分方程式 / 微分加群 / 生成的収束半径 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、次の定理を証明した。Kを標数0の非アルキメデス完備体とし、付値は非自明であるとする。さらに、K上に空でない集合Jで添字づけられた有界で可換な導分の族が与えられているとする。K上の有限微分加群とは、有限次元K線形空間VでJで添字づけられた導分の族の可換な作用が与えられているもののことである。K上の有限微分加群に対し、Kedlaya-Xiaoの意味で、各導分の作用から決まる重複度付き生成的収束半径(subsidiary extrinsic generic radii of convergence)と呼ばれる不変量が定義される。このとき、定理の主張は次の通りである:Vのある直和分解で、各直和因子に対し、Jの元jに対する導分の作用の重複度付き生成的収束半径は、ただ1つの元からなるものが存在する。さらに、適切な意味でこの分解は一意的である。この定理は、Kが有理的な場合とKの剰余体の標数が0の場合にしか知られていなかった(いずれもKedlayaによる)。定理の証明は、双対関手に米田の補題をうまく使いフィルトレーションを構成する手法による。本定理を含むプレプリントを執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の目標は、生成的収束半径に関する分解の研究を完了し、プレプリントを書き上げることであった。研究は完了したが、プレプリントを執筆が途中であったことが、やや遅れているとした理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
ある種のp進微分方程式の解の対数的増大度を上から評価するために, Dworkにより導入されたのが生成点での解の対数的増大度とよばれる不変量である. この不変量は, Chiarellotto-Tsuzukiにより, ある非アルキメデス完備微分体上の有限微分加群のフィルトレーションとして再解釈された. 今後の研究の目標は, この構成を, より広いクラスの非アルキメデス完備微分体上の有限微分加群に対して一般化することが目標である.
Chiarellotto-Tsuzukiの構成は, Dwork, Robbaによるある非可換位相環のイデアルに関する結果に基礎をおいている. 今年度証明した分解定理を導く際の重要なステップとして, この結果を一般化した. この一般化を使いChiarellotto-Tsuzukiの構成を繰り返す方針で研究を推進する.
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Causes of Carryover |
当初予定していた研究集会が、日程の都合により異なり参加できなかったことなどにより、次年度使用額が生じた。情報収集、研究成果の発表等のために、翌年度分とあわせて、情報収集等の経費として使用予定である。
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