2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K03243
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
竹山 美宏 筑波大学, 数理物質系, 教授 (60375392)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 多重ゼータ値 / q類似 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究では,対称多重ゼータ値の q類似を構成した(プレプリント arXiv:2301.1265,投稿中)。Kaneko-Zagier は,有限多重ゼータ値および対称多重ゼータ値と呼ばれる多重ゼータ値の二つの類似物を定義し,これらの間にある一対一対応があることを予想した。このうち,対称多重ゼータ値は,多重ゼータ値全体が有理数体上で生成する代数を,円周率πの2乗が生成するイデアルで割ったものの元として定義される。対称多重ゼータ値は,二重シャッフル関係式,大野型関係式など,多重ゼータ値と類似の関係式を満たすことが知られている。 対称多重ゼータ値の定義においては,多重ゼータ値の2種類の正規化が用いられるが,このうち1変数の多重ポリログ関数を用いる正規化(シャッフル正規化)については,そのq類似を定義するのが難しく,そのため対称多重ゼータ値のq類似を構成することも困難であった。最近,Ono-Seki-Yamamoto によって,対称多重ゼータ値が有限多重調和和の極限として得られることが示された。今年度の研究ではこの構成の q類似を考えることで,対称多重ゼータ値の q類似を定義し,それが二重シャッフル関係式や大野型関係式の一部を満たすことを証明した。この定義においては,πの2乗が生成するイデアルのq類似を定式化するのがポイントとなる。本研究では,多重ゼータ値のうち qを1にする極限で0またはπの偶数乗になるものを選び,これらが生成するイデアルとして定式化した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は種々の数論的対象の q類似を考察することを目的とするものであるが,今年度は対称多重ゼータ値の q類似を構成することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究において構成した対称多重ゼータ値の q類似は,パラメータqの絶対値が1未満の範囲で構成される。今後は q の絶対値が1であるような q類似の構成を試みたい。
|
Causes of Carryover |
家庭の事情により,研究打ち合わせなどのための出張を実施できなかった。次年度分と合わせて,研究資料などの購入にあてたい。
|