2022 Fiscal Year Research-status Report
時空間パターンを形成する細胞シートの連続体モデル構築と解析
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22K03428
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 康明 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (50455622)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | パターン形成 / 細胞接着 / 反応拡散系 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験的に報告されている,2次元培養表皮細胞系がつくる空間的な粗密のパターン形成に対する数理モデルとして,細胞密度と細胞間接着に起因する応力を変数とする空間2次元の連続体モデルの構築を行った.簡単のため応力の非対角成分を無視し,細胞密度と圧力の2変数のモデルの導出に成功した.モデルは初期細胞密度,細胞の局所的な重なりや圧縮に対する最大許容密度,細胞接着の強度をパラメータとして持っており,これらの量が空間パターンに与える影響を調べることが可能となっている.接着強度を主要なパラメータとして数値計算を行った結果,接着強度がある閾値を超えると細胞密度の一様状態が不安定化してスポット状の空間パターンが発生し,閾値以下ではパターンを生じないことを見出した.これは共同研究者によって実験的に見いだされた培養表皮細胞集団のパターン形成をよく説明する結果となっており,細胞接着の効果のみで空間パターンが生じうることを示している.また得られたパターンは非チューリング的であり,表皮細胞系での新しいパターン形成のメカニズムを示唆するものとなっていると思われる.またこの空間パターンが細胞のランダムな運動に対しても維持されるかどうかを調べるため,密度が保存量であることを考慮したランダムノイズを密度の方程式に導入して数値計算を行った結果,空間パターンは一定の強度のノイズに対してロバストであることが明らかになった.続いて初期細胞密度と最大許容密度に対するパターンの依存性も調査し,実験的に妥当なパラメータ範囲で空間パターンが生じることを示した.計算結果は実験結果とあわせて論文準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画であった,細胞の収縮力のみに起因する細胞シートの疎密パターン形成の数理モデル構築に成功している.また実験とよく対応する良好な数値計算結果を得ることができている.
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Strategy for Future Research Activity |
数値計算結果の理論的な解析に着手する.安定性解析を行い,パターンが生じるための細胞接着強度,細胞密度,最大許容密度の関係を明らかにする.また研究計画に従い,得られた数理モデルをより広範な現象を記述できる形に拡張していく.
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Causes of Carryover |
想定より出張が少なかった.次年度に研究発表のための出張を行う予定である.
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