2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of discrete Dirac dynamical systems and variational integrators
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22K03443
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉村 浩明 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40247234)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 離散ディラック系 / Tulczyjewのtriple / 離散ラグランジュ・ディラック系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、非ホロノミックな拘束を受ける連続力学系の離散化に関連して、離散ディラック構造とそれに基づく離散ディラック力学系の枠組みを提案し、さらに、その変分構造を明らかにすることで、離散ディラック構造を保存する変分的積分法の開発を目的として研究を実施している。連続系の枠組みでは、配位多様体上の接バンドル及び余接バンドルの高階のバンドル構造を考え、いわゆる,Tulczyjewのtripleと呼ばれる高階バンドル上で一般化された正準変換を導入した。これにより、ラグランジアンの微分から定義されるディラック微分を用いることで、接バンドル上の1形式を余接バンドル上に誘導した。さらに、余接バンドル上の誘導されたディラック構造によって、連続系のラグランジュ・ディラック系を導いたが、ここで、ディラック構造がフローによって構造不変であることを示した。その上で、これら連続系のディラック構造、及びラグランジュ・ディラック系の離散化を試みた。まず、離散ディラック構造の枠組みの構築には、余接バンドル上の正準2形式から誘導されるディラック構造をどのように離散化するかが鍵となる。また、離散化に際しては,配位空間の接バンドルを、配位空間の直積空間によって近似し、その上で、余接バンドル上の離散ディラック構造を導入することを考える必要がある。2022年度は、まず、連続系のディラック系を定式化する際に重要となる、Tulczyjewのtripleと呼ばれる高階の接バンドル及び余接バンドルの間に成立する、シンプレクティック同相写像について、その離散化を行うことを試みた。そのうえで、まず、離散系の枠組みについては,正準2形式の離散化と離散化した非ホロノミック拘束から誘導される,余接バンドル上の離散化されたディラック構造の構築を行った。また、それを用いて、離散ラグランジュ・ディラック系の候補を導出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
離散ラグランジュ・ディラック系の候補は、離散化の手法によって、いくつかの候補があり得ると考えられる。他の先行研究(例えば、Leok and Ohsawa[2008])では、離散ディラック構造を提案しているが、そもそも、ディラック構造の定義を満たしておらず、問題があった。本研究で提案した、離散ディラック構造は、連続系の場合と同様に、ディラック構造の定義を満足している点で進展した成果を得ている。特に、余接バンドル上の誘導されたディラック構造の離散化を離散化されたシンプレクティック構造を導入することで離散ディラック構造を定義できたこと、また、Tulczyjewのtripleの間に成立する、シンプレクティック同相写像を離散化することに成功しており、一応の成果を挙げていると考えている。また、本研究と関連した応用研究として、ディラック系の非平衡熱力学への応用、特に、ラグランジュ・ディラック系及びハミルトン・ディラック系についての考察,さらには、マルチボディシステムの変分的積分法に関する研究についても並行して実施している。さらに、摂動を受けるハミルトン系としての対流現象のモデル化や混相流による非平衡熱流体現象の解析についても実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に提案した、離散ディラック構造が、離散ラグランジュ・ディラック系の離散フローについて構造保存であるかどうかを吟味する必要がある。2023年度は、離散ディラック構造の証明について考察する。また、連続系のラグランジュ・ディラック系は、ラグランジュ・ダランベール原理によっても定式化できたが、離散系でも同様に離散的なラグランジュ・ダランベール原理によって、離散ラグランジュ・ディラック系が定式化できるかどうかを調査する。但し、非ホロノミック拘束の取り扱いに難点があり、変分拘束と運動拘束を離散化する際に、連続系のように、同じ非ホロノミック拘束を用いて、変分拘束と運動拘束を扱うことができない。特に、離散ディラック構造を用いて導入された、離散ラグランジュ・ディラック系を離散変分構造から導くことができるかどうかが鍵となる。本研究と関連して並行して実施している、ディラック系の非平衡熱力学への応用については、内部接続系に関する考察とハミルトン・ディラック系の変分構造を明らかにしつつあり、今後の進展が期待できる。また、マルチボディシステムの変分的積分法に関する研究についても、多剛体系のロボット及び柔軟ビームを有する剛体の運動解析への応用にディラック系を応用するアイデアを提案していく予定である。さらに、摂動を受けるハミルトン系としてモデル化された流体混合について、周期点の分岐現象などへの展開も計画している。
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Causes of Carryover |
当初の予定では,コンピュータとして,MacBookPro16インチを2022年度秋までに購入する予定であったが,新型機種の発売が半導体不足の関係で遅れて,2023年度1月末の発売となり,年度内に実際に入荷できるかどうかが不明であったこと,また,円安のために,予定していた定価よりも高額となったため,年度内の購入を見送った.2023年度は,MacBookPro16インチの購入費として,846千円を計上する.また,フランスへの学会出張費として63万円を計上する.
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