2023 Fiscal Year Research-status Report
Discretization of molecular liquid dynamics
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22K03553
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
岩下 拓哉 大分大学, 理工学部, 准教授 (30789508)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水 / シリコン / シリカ / イオン液体 / 1,2,3 Triazole / 電気伝導度 / 粘度 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子性液体の粘度の微視的起源と局所構造緩和の関係性を調べるために,水のモデルであるTIP3P/Ewを用いて分子シミュレーションを行い,そのデータから計算した実時間・実空間相関関数の挙動を精査した.これは分子のミクロな局所構造緩和を実験的に調べる有効な測定量である.そのデータから中性子散乱における散乱長の重みをつけた相関関数を計算し,中性子散乱の実験データと比較した.実験的に見出される中距離相関の長時間緩和の存在について調べたが,実験で観測されたような特異な振る舞いは観測されなかった.このシミュレーションデータ解析は,中性子散乱実験データの解析における水分子の自己相関の取り扱いが不十分である可能性を示唆している.結果,実験とシミュレーションとの差異を明確にするべく,実験データ解析をより注意深く検証する必要があることがわかった.また,長時間の挙動では,自己相関と他粒子相関の時間変化の挙動は負号を除いてお互いに同じであり,それらを足し合わせると互いにキャンセルして相殺されることがわかった. さらに,令和5年度に計算したシリコン,シリカ,水,塩水に加えて,新たにイオン液体の粘度挙動を研究対象として加え,液体状態の1,2,3 Triazoleの粘度測定や電気伝導度の測定を行い,液体ー結晶の熱力学的な相図作成やガラス的挙動を観測した.また,非弾性X線散乱実験のデータ解析からのイオン液体ー結晶に関連した挙動を観測し,ミクロな運動に対する知見を深めた.また,高温液体の粘度の温度依存性からその活性化エネルギーを見積もり,電気伝導度から得られる活性化エネルギーとの比較を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粘度と局所構造変化の関係を見出すために,実時間実空間相関関数の振る舞いを精査し,また,イオン液体をターゲットとして物性測定まで行うことができたので、順調に研究が進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,前年度に準備しておいた塩水のデータ解析を行う十分な時間を取ることができなかったために,そのデータ解析について取り組む.
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Causes of Carryover |
今年度は,イオン液体の粘度挙動と物性測定,散乱実験に重点をおき,シミュレーション研究を重点的に実施する時間を作ることができなかった.このために,大型計算機利用料を使用する機会がなかった.次年度は,計算機を用いたシミュレーションを実施し,実験データとの直接的な対応を調べる.また,研究成果を国際学会で発表するための旅費として使用する.
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[Journal Article] Proton Diffusion in Liquid 1, 2, 3-Triazole Studied by Incoherent Quasi-Elastic Neutron Scattering2024
Author(s)
Yuya Shinohara, Takuya Iwashita, Masahiro Nakanishi, Naresh C Osti, Maiko Kofu, Masami Nirei, Wojciech Dmowski, Takeshi Egami
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Journal Title
The Journal of Physical Chemistry B
Volume: 128
Pages: 1544,
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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