2023 Fiscal Year Research-status Report
black holes in gravity theories beyond general relativity
Project/Area Number |
22K03626
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Research Institution | Daiichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
木村 匡志 第一工科大学, 工学部, 講師 (00844763)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ブラックホール / 修正重力 / 準固有振動 / 重力波 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の研究成果は次の通りである。 ・物理では、よく知られたシステムの周りのズレを議論する摂動論がしばしば用いられる。本研究では、ブラックホール準固有振動において、量子力学の摂動論のように振動数を求める方法を提案した。この方法を用いて、電荷を持つブラックホール、質量項を持つスカラー場、宇宙項のある場合についてSchwarzschild ブラックホール周りの摂動として精度良く準固有振動を計算できることを示した。また、回転ブラックホールに対しても、ブラックホールのスピンを摂動パラメータとして議論し、高次摂動を考慮するとTeukolsky方程式を数値的に解いた結果をかなり再現できることを示した。また、一般相対性理論からのズレを計算するParametrized Black Hole Quasinormal Ringdown Formalismにおける係数を、先行研究に比べて非常に精度良く計算できることを示した。[Phys.Rev.D.109,044026,2024] ・修正重力理論の一種である縮退高次スカラーテンソル理論(DHOST理論)の奇パリティ摂動を議論した。物理的に妥当な初期条件を考えた場合の時間発展を数値計算で求め、リングダウン波形について調べた。特に、波形のフィッティングから、一般相対性理論のケースとDHOST理論を区別できるのかを議論した。また、宇宙項が含まれるケースについても調べ、特性曲線や準固有振動の性質を議論した。また、今回調べたクラスの理論については、Schwarzschild-de Sitter ブラックホールのケースと対応関係から準固有振動が議論できることを示した。[Phys.Rev.D.109,024034,2024]
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究[Phys.Rev.D.109,044026,2024]においては、ブラックホール準固有振動を摂動論的な手法で求める一般論が展開されており、従来の方法に比べて精度良く計算できることも示されている。この手法の応用例としても、様々な場合が提示されており、特に、回転ブラックホールや修正重力でも用いることができる点が重要である。今後、この手法を応用することで、修正重力理論における回転ブラックホールの準固有振動が議論できることが期待できる。 研究[Phys.Rev.D.109,024034,2024]においては、縮退高次スカラーテンソル理論における奇パリティ重力波を調べている。従来の研究のように摂動方程式を導出し準固有振動を求めただけではなく、物理的に妥当な初期条件を議論し時間発展も数値計算で求め、確かに準固有振動が波形に現れることを示している点が重要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に明らかにしたいことは次の点である。 ・パリティの破れを含む重力理論における特徴的な現象の探査 ・準固有振動の高次倍音モードの影響 ・スカラー場を含むケースにおける有効場理論に基づく重力理論の構成と物理現象の予言 1点目は、理論にパリティの破れが含まれる場合には、重力の持つ複数の自由度が独立ではなくなるため、球対称ブラックホール周りにおける場合であっても奇パリティと偶パリティのモードの両方を考える必要があり、それに起因する特徴的な現象を議論する予定である。2点目は、リングダウン波形の初期には、高次倍音モードが重要になる可能性が最近指摘されており、これを用いて一般相対性理論からのズレを検証できないかを議論したい。3点目は、前年度に引き続き行うテーマとなる。低エネルギー有効場理論の方法を用いて理論を構成し、ブラックホール時空における物理現象を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
所属機関における学内業務のため当初予想していたよりも学会参加、特に海外での学会参加ができなかったためである。2024年度は、積極的に学会参加を行い、研究会の主催も行う予定である。また数値計算用のパソコンも購入予定である。
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