2023 Fiscal Year Research-status Report
共形場理論におけるモジュラー形式の数理と宇宙定数問題への新たなアプローチ
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22K03628
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
菅原 祐二 立命館大学, 理工学部, 教授 (70291333)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 共形場理論 / 宇宙定数問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる目的は、新しいタイプのモジュラー不変性の研究を通じて弦理論が導く「拡張された」時空概念を明らかにし、素朴な幾何学的な時空上の理論では解決困難と考えられる宇宙定数問題の本質的な解決を目指すことにある。メインテーマである宇宙定数問題に対するアプローチとして、次の性質を持つ模型について、継続的に研究を行って来た: 1)各質量レベルでボソンとフェルミオンの自由度はバランスしていない。すなわち、分配関数はモジュライ空間の各点でゼロではない。 2)1-loopの宇宙定数はゼロとなっている。すなわち、分配関数のモジュライ積分はゼロである。 これは、ボース・フェルミ相殺の機構が働かないにも関わらず1-loopの宇宙定数が消えていることを意味しており、本研究課題が実現を目指す模型の「必要条件」である。さらに、理論の相互作用の効果も考慮した上で、ユニタリー性等のconsistencyを持つことや、宇宙定数がゼロである(または非常に小さい)という性質が保持されるかどうかは重要な問題である。これらを検証することを視野に入れ、本年度は、宇宙定数に直接関わる分配関数のみならず、重力子等の頂点演算子が挿入された1-loopの散乱振幅や、higher loop (すなわちhigher genusの世界面)の補正等について解析を行った。 一方で、これまで実施してきた非対称オービフォルド等の「非幾何学的」なコンパクト化の研究に「一般化対称性」等の新しい視点も加えた新しい研究の方向性を模索するための準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の中で主に扱っている模型のhigher loopの補正、すなわち、higher genusの世界面上での詳細な解析の技術的な難しさに起因し、予想以上に解析に手間取っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を継続し、本研究課題の目的である共計場理論に基づく宇宙定数問題へのアプローチを行うことはもちろんであるが、さらに視野を広げ、これまで実施してきた非対称オービフォルド等の「非幾何学的」なコンパクト化の研究に「一般化対称性」等の新しい視点も加味した方向性を模索したい。
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Causes of Carryover |
2023年度の予算はほぼ予定通り執行したものの、前年度からの繰り越し分がほぼそのまま残る形となった。これは、当初予定していた共同研究者との研究打ち合わせ等を目的とした出張を取りやめたことなどがその主たる要因である。2024年度は最終年度であり、本研究課題の成果を上げるため、共同研究者との研究打ち合わせや成果発表等を目的とした国内外の出張の機会を増やすことによって、残りの予算を有効活用したいと考えている。
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