2023 Fiscal Year Research-status Report
From low energy nuclear experiment to explosive astrophysical phenomena: Trojan Horse Method approaching X-ray bursts
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22K03661
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早川 勢也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (00747743)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 原子核物理学実験 / 宇宙核物理学 / 不安定核ビーム / X線バースト / rp過程 / トロイの木馬法 / 冷却気体標的開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、直接的には測定の難しい原子核反応26Si(α, p)31Pの反応断面積を間接的に測定することによって、その反応が重要となるX線バーストなどの天体現象中の元素合成過程への影響を解き明かそうとするものである。当初の計画としては、研究の前段階で直接測定が適用可能な高エネルギー領域(重心系エネルギーで>3 MeV)で断面積を確定してから、トロイの木馬法による間接測定により、低エネルギー領域へデータを延伸する計画であった。しかし、前研究(科研費課題番号: 18K13556)の直接測定では、理論的な統計モデルから予想される断面積よりも1-2桁程度以上も小さいことが分かり、断面積の絶対値の規格化が必要なトロイの木馬法にそのデータを適用するほどのデータの質を得られなかった。そのため、当該年度では、より有用なデータを得るための測定技術の開発・改良を進めた。また、研究戦略を柔軟に再考し、当初の測定対象である26Si(α, p)31P反応以外の、X線バーストで重要な反応測定の検討も進めており、トロイの木馬法測定の先駆者であるイタリアのグループと定期的にオンライン会議を開催している。 実験装置、測定技術の整備や開発としては、不安定核ビーム実験で必要な、ビームモニターとして使用するガス検出器の修理や改良、真空部品や電子機器部品等の実験室のインフラ整備を主に進めた。また、本研究および前研究の内容で修士号、博士号を取得した学生、および研究代表者による学会発表も積極的に行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
過去の関連研究(科研費課題番号: 18K13556)の直接測定では、理論的な統計モデルから予想される断面積よりも1-2桁程度以上も小さいことが分かり、断面積の絶対値の規格化が必要なトロイの木馬法にそのデータを適用するほどのデータの質を得られなかった。そのため、当該年度の進捗としては、より有用なデータを得るための測定技術の開発・改良に注力した。 また、同様の測定技術でより高いインパクトを得るべく、測定対象を26Si(α,p)31P反応以外にも広げ、実験実現に向けてイタリアの関連グループと検討を進めている。研究の進捗状況としては当初の想定よりやや遅れているが、2024年度に理化学研究所での加速器使用実験のためのプロポーザルを提案するために実験のデザインを固めつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針については、より有用なデータを得るために、当初の計画からいくらかの変更が必要であると考えている。X線バーストでの元素合成過程中の他の重要な原子核反応に測定の主眼を移すことになれば、研究の大きな方針の転換であるが、これは当初想定していたトロイの木馬法による26Si(α, p)31P反応の測定の手法を適用できるので、今までの実験装置・技術の整備の土台をそのまま応用できる。また、実験の動機としては、X線バーストという天体現象を解明するという同じ科学的背景を持ち、インパクトとしても当初の測定対象と同等かそれ以上の研究結果となりうると考えている。 どの原子核反応測定を実現するかにせよ、共通で必要となる実験装置の整備を進めることは重要である。シリコン検出器を通常よりも多数使用する必要があるため、確実に運用するために検出器の増強、ケーブル類、フィードスルー類、プリアンプ類、信号処理回路系統、データ収集系統 の高度化・効率化を進めていく。また、安定核ビームから生成される不安定核ビームの強度を上げることも統計量を増やす上で重要であり、そのための生成標的の耐熱性能を上げるための伝熱シミュレーション、気体標的容器の試作、気体循環用のポンプ性能の増強なども検討していく。
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Causes of Carryover |
関連する前研究の結果を受け、当初の計画どおりには実験を進めることが必ずしも効果的でないことが分かり、計画の変更が必要であったため。その上で、共通する実験手法に必要な測定環境の整備に主に注力したため。
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