2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K03673
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
峰崎 岳夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任教授 (60292835)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 補償光学 / レーザーガイド星 / レーリー散乱 / ライダー / ToF測距 |
Outline of Annual Research Achievements |
望遠鏡口径のもつ回折限界角度分解能を実現する補償光学技術はいまや大型望遠鏡に必須の装備となっているが、その性能を発揮できる天域が全天のごく一部に限られるという課題があった。レーザーガイド星の技術によってこれを解決できるが、大型望遠鏡で実用化されている大気ナトリウム層の励起発光を利用したレーザーガイド星は光源に特注の極めて高価な製品が必要であり、システム導入上の大きな課題となっている。本研究では安価なパルスレーザーのレーリー後方散乱とレンジゲート機構によって実効的に高度10-20kmの人工光源として調整する、レーリーレーザーガイド星システムの基礎技術の習得を目的とし、①パルスゲートシステムを使ったレンジゲート機構を製作し、②地表付近の特定の距離においたターゲットによる反射を利用してレンジゲート機構の機能を確認し、③地上大気の任意の距離にレーリー後方散乱を利用したレーザーガイド星を構築する地上実験を行う。 今年度は地上実験全体の設計を進め、とくに現代的な機材によるレンジゲート機構の調査を進めた。現在実用化されているレーリーレーザーガイド星システムではポッケルスセルという電気光学変調器により光路を高速に遮蔽・透過を切り替える機構が使われている。一方で古典的にはイメージインテンシファイアという光電映像増強管により高速に増幅・非増幅を切り替える機構が使われていた。近年の製品技術の進展によりイメージインテンシファイアの高度な制御が可能となっており、より高効率なレンジゲート機構を構成できることがわかった。さらに自動運転のためのレーザー測距への応用などを目的に、複数の電子機器メーカーにより SPAD イメージセンサーの開発が進んでいる。このセンサーを応用すれば、そのロジック制御だけでレンジゲート機構の構築ができる可能性がある。しかし残念ながら、いまだ市販には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請よりも大きく減額されて予算措置がなされたため、費用圧縮のためにレーザー光源やレンジゲート機構の再調査を行った。またレンジゲート機構の一方式のキーデバイスである SPAD イメージセンサーは、これが利用できれば画期的な方式となり得るが今年度は市販されておらず入手できなかった。そこで SPAD イメージセンサーの入手性を見極めるためレンジゲート機構のシステム調査を延長することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
レンジゲート機構のキーデバイス(ポッケルスセル、イメージインテンシファイア、SPAD イメージセンサー)の入手性や費用・性能を比較しつつ、最終的にレンジゲート機構の基本的な方式を選び、キーデバイスの購入とシステム構築に進む予定である。
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Causes of Carryover |
申請よりも大きく減額されて予算措置がなされたため、費用圧縮のためのレーザー光源やレンジゲート機構の再調査を行ういっぽうで、今年度予算を繰り越して次年度予算と合算して、レンジゲート機構のためのキーデバイスの購入に当てる予定である。とくに SPAD イメージセンサーが利用できれば画期的なレンジゲート機構を実現できるが、今年度は市販されておらず入手できず入手性については不透明である。そこで次年度まで待って、本研究課題におけるレンジゲート機構の方式を見極める予定である。
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