2022 Fiscal Year Research-status Report
Modeling electromagnetic wave signals from supernovae associated with gamma-ray burst
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22K03690
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 昭宏 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (50647659)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ガンマ線バースト / 超新星爆発 / 相対論 / 宇宙ジェット / 流体力学 / 放射輸送 / 輻射流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ガンマ線バースト(GRB)における超相対論的ジェットと星周物質との衝突過程の研究を推進した。GRBはローレンツ因子が100を超えるジェットのエネルギー散逸によって即時ガンマ線放射及び広い波長範囲に渡る残光放射が駆動される。また、本研究課題で着目する継続時間の長いGRB(long GRB)は大質量星の重力崩壊に伴って発生することが知られている。 近年の超新星可視光観測から示唆されているように、GRB親星においても重力崩壊直前に放出された物質が濃い星周物質として親星周囲に存在している可能性を考え、GRBジェットが星周物質に衝突し伝搬が妨げられる過程の3次元特殊相対論的流体力学シミュレーションを行った。星周物質として、質量と外縁半径を自由パラメータとした定常恒星風のプロファイルを仮定し、パラメータの異なる10モデルを計算することで、ジェット伝搬における星周物質の物理的性質への依存性を調べた。その結果、星周物質の質量や外縁半径に対してGRBジェットがそのエネルギーを様々な度合いで散逸する衝突過程を再現し、結果としてどの程度の星周物質を加速し星間空間へ放出するのかを明らかにした。その結果、ジェットのエネルギー散逸によって放出される準相対論的エジェクタの質量やエネルギーは星周物質のパラメータに弱く依存するのみであり、その密度プロファイルは普遍的に-5を指数とする半径の冪関数に近いものとなる可能性を見出した。以上のシミュレーション結果と考察をまとめた論文を執筆中である。 また、今回のシミュレーション研究と相補的な試みとして、共同研究者である京都大学の前田啓一教授とガンマ線バーストに付随する超新星の初期可視スペクトルの形成過程についても研究を進め、前田教授を筆頭著者とする査読論文が王立天文学会月報から出版予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、本研究で中心的に取り組む予定の課題の一つであったGRBジェットと星周物質の相互作用の研究について、3次元特殊相対論的流体シミュレーションを実施し、濃い星周物質中でのジェット伝搬の過程について調べた。数値シミュレーションは年度前半に主に東京大学ビッグバン国際宇宙研究センターが運用するスーパーコンピュータ及び自然科学研究機構国立天文台が運用するスーパーコンピュータを利用して実施し、全10モデルの計算を終えた。シミュレーション結果は直ちに解析を行い、過程した物理パラメータへの依存性などを明らかにした。現在はその結果をまとめた論文を執筆中であり、次年度の早い段階での査読論文誌への投稿を目指す。 また、この他にも京都大学の前田啓一教授との共同研究である、GRBが付随する超新星の早期可視光スペクトルの研究があり、こちらは査読論文誌から出版予定である。 以上から、本研究課題の進捗状況として「(2)概ね順調に進展している」が適当であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で述べたとおり、本年度に実施した3次元流体シミュレーション結果をまとめた論文を執筆中であり、次年度の早い段階での原稿の完成と査読論文誌への投稿を計画している。 また、本年度に実施した数値シミュレーションによって明らかになったのは、GRBジェットが星周物質と衝突してその力学的ネルギーを散逸する際には一定の量の星周物質が光速の10%以上の速度にまで加速され星間空間に放出されるということである。この準相対論的なエジェクタ成分はジェットよりも広い立体角に放出され、熱的放射によってUVや可視光で明るく光るほか、さらに外側の媒質と衝突して衝撃波粒子加速を起こすことでシンクロトロンや逆コンプトン散乱といった非熱放射によっても輝くことが期待できる。対応する突発天体の多波長観測を読み解く上ではこれらの放射成分への深い理解が不可欠となる。次年度にはこの準相対論的エジェクタ成分からの熱的及び非熱的放射の光度曲線の計算を行うことで、GRBジェットが星周物質と衝突する際の電磁波シグナルの総合的な理解を目指す。 また、それと並行してGRBのような相対論的ジェットが重要となる可能性がある他の突発天体の研究も推し進める。具体的には過去10年程度の突発天体サーベイの進展によって明らかになってきた明るく進化タイムスケールの早い可視光突発天体(Fast Blue Optical Transients; FBOTs)である。FBOTsの起源天体は未解明であるが、GRBのような天体である可能性も議論されており、数値シミュレーションに基づいた流体モデルの構築によってGRB起源説の妥当性を定量的に評価する。
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Research Products
(8 results)