2023 Fiscal Year Research-status Report
深探査変光サンプルに基づく高赤方偏移の低光度活動銀河核とブラックホール形成の研究
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22K03693
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
山田 亨 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (90271519)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 活動銀河核 / ブラックホール / 銀河形成 / 銀河進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
すばる望遠鏡HSC-SSP Ultradeep Survey 観測データに基づく変光を用いた活動銀河核(AGN)探査について、これまでに検出したサンプルに対して、巨大ブラックホール(SMBH)質量および母銀河の星質量を求め、その関係を調べる研究を行った。赤方偏移 z=4-5 以上では、最近、JWST望遠鏡による中質量SMBH が多数見つかりその多くが母銀河に対してオーバーマッシブであることを示すなど、この分野の研究が注目を集める中、我々の研究では、これまで系統的に調べられていない赤方偏移 0.5-4 の AGN についてBH質量・母銀河星質量を系統的に調べた結果を初めて示したものである。変光母サンプル491天体中208天体のBH質量を求め、またそのうち 120天体の母銀河星質量を求め、その関係と赤方偏移関係を調べたところ、10^7-8太陽質量、10^8-9太陽質量のBHではBH質量・星質量比が 0.5<z<2-3 にわたり近傍宇宙の天体と変わらない一定の値を示すこと、また、10^9太陽質量を超える大質量BHでは中間赤方偏移においてもオーバーマッシブな天体が多数見られることが判明した。これらの結果は、査読論文としてとりまとめ出版が受理された (Hoshi, Yamada et al. 2024, Astrophysical Journal, accepted)。 このほか、すばる望遠鏡観測時間を取得し低質量SMBHを同定する観測を行い、z=1.2 で10^7太陽質量のBH天体を同定することに成功した。 また関連する研究として、せいめい望遠鏡を用いて合体するSMBH候補天体のスペクトルモニタリング観測を行い、その成果を査読論文として公表した (Hoshi et al. 2024a, Pub. Astron. soc. Japan 76, 103)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに自身の主導で構築していたすばる望遠鏡深宇宙サーベイデータを用いた変光観測に基づく活動銀河核のサンプル (Kimura, Yamada et al. 2020 として公表済み) 491天体について、分光データから輝線速度巾を測定することなどにより活動銀河核であることを確認すると共にブラックホール質量を測定することが当研究の目標のひとつであるが、これまでにすばる望遠鏡、Keck望遠鏡、SDSSサーベイ、DESIサーベイなどですでに観測されているデータのアーカイブを収集して、再解析を行い、約200天体についてブラックホール質量を求める事ができた。また、そのうち約150天体についてすばる望遠鏡サーベイをはじめとする多色測光データを用いることにより、母銀河星質量を推定することができた。これを用いて、当初の目標である中間赤方偏移・高赤方偏移までのブラックホール質量と母銀河星質量の比の赤方偏移進化について研究を進めることができ、研究2年目においてここまでの成果をとりまとめ査読論文として公表することができた。あわせて、変光サンプルからできるだけ低質量のブラックホールを検出することも目標であるが、これについてもすばる望遠鏡による観測時間を取得し観測を行うことができ、赤方偏移1.2 で太陽の約1000万倍の低質量ブラックホールをあらたに同定することに成功している。変光に基づく活動銀河各研究を発展する意味では、Nancy Grace Roman宇宙望遠鏡計画の検討において NASA が公募した Whitepaper のひとつとして、High Latitude Time Domain Survey による変光を用いた低光度活動銀河核探査の可能性を論じることを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
変光活動銀河核サンプルについて、中間赤方偏移・高赤方偏移の低質量SMBHを同定する研究をさらに拡大して推進する。これまでの成果にも基づき、まずは、Kimura et al. (2020)変光サンプル 491天体のうち、ブラックホール質量が測定できていない天体について、これまでの継続としてすばる望遠鏡などによる新たな分光データの取得を目指す。これによって、解析全体の統計的な精度を高めると共に、中間・高赤方偏移の低質量ブラックホールをできるだけ多数同定する。 また、これらの研究成果に基づき、また ジェームズ・ウェブ宇宙望遠鏡などで進みつつある高赤方偏移の低質量ブラックホール観測のデータなども活用して、銀河・SMBH形成との関連に研究を発展させる。ウェブ望遠鏡で見つかっている z>6 の比較的低質量までオーバーマッシブとなっているSMBHの存在と、我あれの変光サンプルを会わせて宇宙全体の構造形成・進化の中でその振る舞いを解釈する研究を進めたい。 ROman宇宙望遠鏡にむけてのデータ解析準備もすすめ変光活動銀河サンプルをより系統的に、より低質量まで構築するための観測提案も併せて準備してゆく。 また、国内外の研究会・学会などで発表を行うなど、これまでの研究成果の発進にも注力してすすめたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、まず、すばる望遠鏡・ケック望遠鏡、DESIサーベイなどのアーカイブデータなどを用いて既存のデータの収集・解析を中心に検討を進めた。これに加えて新たな分光データの取得を進める予定であるところ、すばる望遠鏡共同利用観測における観測割り付けによって観測実施のタイミングが 3/28 頃のほぼ年度末となった。このため、当初今年度に予定していたさらなるデータの解析作業およびこれまでの研究成果を学会・研究会などで発表する作業は次年度に、より集中的に、行う事としたため、次年度使用額が生じた。 これをうけて研究最終年度となる次年度ではデータ解析をより効率的に進めるとともに成果発表を活発に行う計画であり、、8月に予定される国際天文学連合シンポジウム(ケープタウン)、10月に予定される銀河・ブラックホール形成研究会(ポルトガル)、12月に予定される銀河形成研究会(パリ)における成果発表などに使用する。
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Research Products
(3 results)