2023 Fiscal Year Research-status Report
強ひずみ加工法により作製した超微細結晶組織材料の逐次加工性向上
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22K03832
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
田中 達也 同志社大学, 理工学部, 教授 (70434678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 博之 同志社大学, 理工学部, 教授 (10298698)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 超微細結晶材料 / 銅合金 / 強ひずみ加工 / 強度 / 短距離秩序 / 転位密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続きECAP加工における結晶組織の変化に及ぼすMn添加の影響を調査した。 昨年度は、Mnの量が増加するにつれて、硬度と引張強度が増加した。特にMn含有量の高い試料では、ECAPの限界である8パス後も加工硬化が継続した。銅へのMn添加は積層欠陥エネルギーを変化させないため、微細化の効果は固溶体効果(剛性率効果)によると考えられる。一方、Cu中のMnは短距離秩序(SRO)を形成することが知られているため、その点についても確認する必要がある。そこで、Cu-Mn合金の微細化と機械的性質に及ぼす短距離秩序(SRO)の形成の影響を調べた.使用した試験片はCu-10%Mnである.試験片は時効処理したものとしていないものを用意した.SROの形成を目的に543Kで48時間時効処理したCu-Mnについては、熱処理後に水冷した.それらの試料に圧延加工を施し,それぞれ圧延率0%,20%,40%,60%に加工した.これらの試料について,ビッカース硬さ試験,引張試験を行った.ビッカース硬さに関しては時効処理無し,時効処理有りともに圧延率の増加に伴いビッカース硬さも増加していることを確認した.引張試験では,各圧延率で比較すると0%,20%ではほとんど違いが見られないものの,圧延率40%では時効処理有りの試料の方が時効処理無しの試料より引張強さが2.5%,圧延率60%では時効処理有りの試料の方が時効処理無しの試料より引張強さが4.1%増加した.加工硬化率の変化では,圧延率40%と圧延率60%の時効処理有りのCu-MnではステージⅡからステージⅢへの移行が遅れていることが明らかになった. SROの形成が圧延後の加工組織において動的回復が遅れ転位の蓄積を促進したことが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銅へのMn添加は他のAlやZnなど他の合金元素に比べて、積層欠陥エネルギーの変化が小さい。ECAPによる微細化に及ぼすMn添加の効果はAlに比べて小さいが、高ひずみ域(高パス数)においても持続傾向があることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
ECAP加工による微細化に及ぼすMn添加の影響は固溶体効果(原子サイズ効果と剛性率効果)と短距離秩序の形成による効果の二つ可能性から検討する。短距離秩序の形成は積層欠陥の減少と同様に転位の交差すべりを抑制するため、動的回復の抑制と微細化促進の効果があると考えられる。引続き、時効処理による短距離秩序を形成させるとともに、電子顕微鏡による回折現象や機械的性質からその形成を確認していく。そのうえでSROの形成が結晶粒微細化に及ぼす影響を明らかにする。
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