2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K03864
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
屋我 実 琉球大学, 工学部, 教授 (60220117)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 遷音速ディフューザー / スロート / ピエゾ素子 / エアベアリング / 圧力変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度2023年度は主に実際に流れを再現する装置を作成し、実施した実験結果とさらに詳細な計算をしたシミュレーションによる計算結果を比較した。 実験はピエゾ素子の影響を最大限にするためスロート高さを1mmとして、印加するピエゾ素子駆動用電圧を変えてスロートにおける圧力変動の影響を調べた。さらに可視化による観察で風洞圧力比による衝撃波の位置の変化も調べた。その結果ピエゾ素子の変位が約0.05mm程度と非常に小さいにも関わらずスロート壁面に設けたスリット近傍の圧力変動がピエゾ素子の同じ周波数で確認できた。またその変動の大きさは風洞圧力比とともに増加していることが分かった。一方衝撃波の平均位置はピエゾ素子の振動の影響をほとんど受けないことが確認できた。また衝撃波形状は測定部上壁からの境界層の剥離が発生してラムダ型になっていることも確認できた。 さらに2次元シミュレーションにおいては、メッシュを去年度より多く設定し乱流モデルも検討することでダイナミックメッシュを適用したピエゾ素子の駆動の再現も達成でき、その条件による圧力変動の妥当な結果が得られた。計算で得られた圧力変動はピエゾ素子の変位と正確に同期し負の相関があることがわかった。また計算においては実験で測定できなかった衝撃波位置の変動に関してピエゾ素子の変位と同期していることがわかった。さらに計算ではスロート近傍の複数の位置における圧力を時系列で取り出すことができるため、ピエゾ素子の影響をより広範囲で確認することができた。 その結果スロート近傍で測定された圧力はほぼ完全に同位相であり、ピエゾ素子の変位と同期していることが分かった。しかしその振幅は位置によってかなり違いがあり、ピエゾ素子の近傍が最も大きいことが確認された。またスロートの上壁に設けられたスリットからさらにつながっている細い流路へも圧力変動があることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り実験装置を作成し、実験を行うことと並行しシミュレーションによる様々な計算の実行で同装置に及ぼすパラメータの重みを明らかにすることができた。すなわちピエゾ素子の変位は目視できない程度に非常に小さいため、ピエゾ素子の時間的な変化に基づいた正確な測定は極めて困難であった。実験的に確認する方法はピエゾ素子の振動が装置に伝わることによる音のみであった。なおその振動は圧力を測定するための半導体小型圧力変換器への影響はないことも確認している。その実験的な課題を補うためにシミュレーションが極めて有効な手法であることを明らかにしたことは今後の制御性に着目した性能向上に極めて大きな成果である。また実験においてシュリーレン法を用いた可視化結果のなかで、始動衝撃波の位置と形状は比較的容易に確認できる。その結果実験で求めた圧力比と衝撃波位置の関係がシミュレーションで得られた結果とある程度一致していることも確認できたが、衝撃波の非定常なふるまいは確認できず、計算との比較は今後の課題である。 一方でスロート近傍における圧力変動は、スロートの位置で流れがチョークした後は極めて小さくなる。その条件下においてスロートの圧力変動に及ぼすピエゾ素子の影響が顕著になることが確認されことから、ピエゾ素子の影響を最大限に取り出す条件として、流れのチョークであることも明らかにした。ただしその影響は風洞圧力比により変わるため、様々な圧力比において最適な影響を及ぼす条件はパラメータの種類の多さからすべて完了したとは言えない。 逆に流れ場全体が亜音速で、風洞圧力比の上昇によりチョークに状態に近づくと流れ場不安定になり衝撃波や複数の圧力波がスロート近傍に近づくことが確認されている。これを利用すれば圧力変動がより大きい衝撃波や圧力波を積極的に利用できる可能性もあるが、その制御にはさらなる工夫が必要であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは実験装置を作成し実施することで得た実験結果と流れ場の解析による計算結果を比較してきた。今後はこれらを比較したことによる知見を基にまず実験では得られた流れの情報を詳細に検討する。例えば流れ場における複数の位置において、計算で得た圧力変動を取り出しピエゾ素子を駆動した場合としない場合、さらにスリットの上側に存在する小さな出口における流出条件が壁条件にした場合の圧力変動を調べる。これは実際のベアリングを想定した場合のパラメータの設定で、ベアリングが密閉されている場合や大気に開放されている場合の状態を想定した場合の状態をえることが目的である。 さらに計算において複数の位置で正確に同時に圧力変動が取得できるため、任意の位置における圧力の相互相関やピエゾ素子との相関を取得予定である。これは実際に流れ場の制御に必要な時間遅れの評価等で極めて重要になるパラメータであると考えられる。 また、スリットからエアリング隙間に至る流れは、その隙間が小さいことからディフューザを流れる流速に比べて小さいことが分かっている。したがって流れの移動は遅いものの圧力は波動で伝わることを考慮するとスピンドルを支える圧力の状態を明らかにすることで、隙間を制御するための特性も調べる予定である。さらに今後はより実際に近い流れを再現するため計算において壁の境界条件の速度を回転する条件に設定予定である。この計算の妥当性が確認できれば速度をさらに増加させ超音速流れまで計算することを検討する。これはスピンドル壁の速度はスピンドルの回転数から算出できるが、その直径が大きくなると回転数が一定でも接線速度が速くなることを考慮すると、いずれ超音速になる可能性があるためである。その状態はこれまで実験的な報告がないことから重要な研究成果となることが期待できる。
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Causes of Carryover |
2023年度は主にベアリングの性能に及ぼすパラメータ把握のため、ピエゾ素子を実際に設置した実験を実施ながら、非常に詳細な流れ場の状態を調べたる必要があったことからシミュレーションによる多くの計算を実施した。まずシミュレーションの妥当性の確認のためのメッシュの影響と流れの粘性規定する乱流モデルを選定することから始まり、ピエゾ素子の動きを再現するメッシュの構造を動的に定義することに時間を要した。そのため主に実験はこれまでの部材を使用し繰り返し実験したため新たな購入は発生しなかった。 一方で計算の妥当性を議論するため国際学会へ参加し海外のシミュレーション専門家との意見交換を重視したため、その参加が大きな活動となった。したがって旅費以外の支出が執行されていないが、最終年度である2024年度はこれまで実験的に得た知見とシミュレーションによって得られた詳細なデータを参考に最終的な制御パラメータを同定し、それを実験的に検証予定である。また今年度も国際学会に参加を計画していることため、新たな知見を取得することも期待できる。
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Research Products
(2 results)