2022 Fiscal Year Research-status Report
撥水面上のウルトラファインバブル膜での界面滑りを利用した部分スリップ軸受構造
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22K03888
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
竹内 彰敏 高知工科大学, システム工学群, 教授 (30206940)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ウルトラファインバブル / 撥水処理 / 親水処理 / スリップ / スラスト軸受 / 摩擦低減 / ディンプル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ウルトラファインバブル(UFB)を含んだ潤滑剤(UFB水)を使用し,撥水性の表面や内面を撥水化した凹み(ディンプル)に,極微小な気泡の膜を形成してスリップを発生させることにより潤滑性能の向上を図り,そして,UFB膜のあるスリップ領域とUFBが付着しない非スリップな親水領域をすべり方向に交互に配置した,新しい部分スリップ軸受構造を提案する.2022年度には,以下の内容を明らかにした. ●直径500μmの微小範囲での光学観測が可能な高速スラスト軸受試験機と高速度カメラを用い,極薄膜平行面(高せん断場)でのUFB膜の経時変化やせん断速度の影響を調べ,発生したUFB膜が30分経過後でも安定して存在すること,せん断速度が増加してもUFB膜の領域の拡張はほとんどないこと,100μm直径のディンプル(深さ約15μm)の底部や出口領域以外に、粗さ突起の拡大領域からのUFB膜の発生が確認されたこと,20℃以下の低温UFB水でUFB膜の形成が容易であること等,UFB膜の特性に関する基礎的事項が明らかになった. ●壁面での高いスリップが期待できる撥水面でのUFB膜の形成を想定し,UFB膜の無い親水面との間でのせん断流量の不連続性を誘起して圧力を発生させる,スリップスラスト軸受の計算プログラムを完成させた.そして,効果的なスリップ長さbの範囲がb<10μmで十分であること,軸受の摩擦特性や軸受面での発生圧力の推定には,臨界せん断応力(せん断速度)を考慮した2項スリップモデル的な扱いが必要となること等を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績概要で述べたように,2022年度には,UFB膜の発生と付着の確認,そして,UFB膜の発生し易い条件(撥水処理の効果,UFB膜発生に対する撥水ディンプルや粗さ面の重要性、そして水温の影響)等,以後の研究の基礎となる事項を明らかにすることができた.加えて,撥水領域へのUFB膜の形成を想定した部分スリップスラスト軸受の特性計算用プログラムを作成し,軸受特性改善に有効なスリップ長さの範囲を明確にした他、同軸受の軸受特性や軸受面圧力分布の解明には,臨界せん断応力(せん断速度)を考慮した2項スリップモデルが欠かせないこと等を明らかにでき,実験での軸受特性を理解するための下地を形成することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度中には,UFB膜の形成条件(環境)や軸受特性の改善に有効となるスリップ長さbの範囲等の,基礎事項を明らかにすることができた.2023年度以降については,UFB膜での摩擦低減や撥水・親水領域を配置したスラスト軸受での実験を行い,UFB水を潤滑剤として用いた場合のスリップ長さbや,潤滑特性への影響について主に検討する. ●球面座を有する静圧空気軸受を用いた,極微小な摩擦の測定と潤滑面の光学観測機能を備え,摩擦変化(低減)に及ぼすのUFB膜形成の影響を直接観測可能な,高精度な軸受試験機を製作する. ●固定側のガラス円板試験面の3領域を10μm程度の浅い撥水溝とした従来型の扇状ステップスラスト軸受を作成し,撥水溝部へのUFB膜の付着による潤滑特性の改善の可能性について調べる.また,直径100μmの撥水ディンプル(棚部は親水)を配置したスラスト軸受により,摩擦特性の改善に及ぼす撥水ディンプル凹部へのUFB膜付着の効果を明らかにする. ●潤滑面間の膜厚設定が可能な前記スラスト軸受試験機により,2枚の鏡面ガラス製平行円板(全面親水/全面撥水)間のクエット流れで測定される膜厚と摩擦力の結果を,両試験片を全面親水とした場合の結果と比較することでスリップ長さbを概算し,撥水性の程度や潤滑剤中のUFBの密度,そして,せん断速度への依存性等の基礎的事項を明らかにする. 以上の実験等を通して,UFB水の潤滑剤としての可能性を検討する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由としては,1)2022年度実験では、予備実験段階のものが多く,同一試験片の使用頻度が高かったこと.2)精製水を使用した実験も多く含まれており,UFB水の使用量が相対的に減ったこと.3)極微小な摩擦の違いと,潤滑面の光学データの同時測定を可能にする,球面座静圧軸受の設計と製作において,主要部品の再検討があり,同軸受を組み込んだ実験装置の基本構造部の製作が2023年度の初頭まで続いたこと(現状では当初の予定通り基本構造部は完成している)が上げられる. 2023年度は,上記装置の付帯部品の製作と,試験片の新規製作,頻繁なUFB水の使用があり、これらに「次年度使用額」分を充てる.
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Research Products
(8 results)