2022 Fiscal Year Research-status Report
拡張された熱力学で迫る流体力学的ゆらぎの階層構造の解明
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22K03912
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Research Institution | Tomakomai National College of Technology |
Principal Investigator |
有馬 隆司 苫小牧工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (80735069)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 拡張された熱力学 / 流体力学的ゆらぎ / 多原子分子気体 / ノズル流れ / 体積粘性率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、微細スケールの熱流体現象の記述に向けて、物理量の急激な変化を伴う強い非平衡性と流体力学的なゆらぎを同時に考慮した熱力学理論の構築と展開を「拡張された熱力学(ET)」を基に目指すものである。 今年度は、次の研究成果を得た。 1.単原子分子希薄気体に対して確立しているETに基づく流体力学的ゆらぎ理論を多原子分子希薄気体や実在気体を含むより広い対象に拡張するための基礎的な検討を行った。特に、実在気体では、分子間ポテンシャルによる内部エネルギーゆらぎ及び圧力ゆらぎが場の時間発展に重要な役割を示すので、これらの量と非平衡エントロピーとの関係をエントロピー原理を通して調べた。 2.ETによってゆらぎの階層的構造を調べることも目的の一つである。今年度は、ゆらぎが無い場合において、ETから導出される場の方程式系の低次の階層に含まれるNavier-Stokes-Fourier理論の輸送係数と高次の散逸的物理量の場の方程式との関係を明らかにした。この結果は論文として出版済みである。 3.流体力学的なゆらぎが熱・質量輸送に及ぼす影響を定量的に調べるため、単純流路内のゆらぎを伴う流れの解析が本研究課題の一つである。今年度は、ノズル流れに焦点を絞り、ゆらぎを伴う流れの比較対象となる、ゆらぎが無い場合の流れの解析を行った。具体的には、ゆらぎが無い場合にも非平衡性がノズル流れに及ぼす影響の理解はこれまで不十分であったため、ETを用いて準一次元ノズル内流れの数値解析を行った。Euler方程式系による理論予測の結果と比較を行うことで、散逸的物理量の影響を明らかにした。特に、体積粘性率が大きな気体に対しては、流入口の非平衡温度の制御によって流れの状態の制御ができることを明らかにした。非平衡温度の設定によっては、末広ノズルにおいてもチョーク現象が現れることも明らかにした。この結果は論文として出版済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、多原子分子希薄気体と実在気体に対して、順にゆらぎ理論の構築を目指していたが、これらを包括的に扱う理論構築の可能性が出てきた。当初計画の想定を超える理論体系の構築に取り組んでいることから、やや進捗が遅れている。早急にこの課題に取り組みたい。 一方、具体的な流れの解析については、予定より早く進んでいる。ゆらぎが無い場合ではあるが、ノズル流れにおける非平衡性の理解に関する成果が当初の予定を超えて挙がり始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
多原子分子希薄気体と実在気体に対する流体力学的ゆらぎ理論の構築を進める。また、相対論的流体などへの応用の検討も進める。 流れの数値的解析については、ノズル流れにおける非平衡性の影響をより詳細に解析する。さらに、ゆらぎを伴う流れの解析手法について具体的な検討を進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、2件の国際会議での発表を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、1件はオンライン開催となり、1件は参加できなかったためである。 次年度使用額は、研究打ち合わせのための旅費および計算機環境整備費に使用する予定である。
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