2022 Fiscal Year Research-status Report
Effect of wall elasticity on hemodynamics inside patient-specific cerebral aneurysm
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22K03919
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山口 隆平 東北大学, 流体科学研究所, 学術研究員 (90103936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 信 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (20400418)
田中 学 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (20292667)
安西 眸 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (50736981)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Cerebral aneurysm / Wall shear stress / Elasticity / Flow instability / PIV |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、動脈瘤の好発部位である中大脳動脈の分岐部に発生した患者固有の実寸動脈瘤を薄膜弾性壁で再現し、主に実験により弾性壁の効果を検討した。この脳動脈瘤を薄膜実寸弾性壁で再現している研究者は極めて少ない。動脈瘤の進展 破裂の予測評評価の精度の向上のため、柔軟な薄膜弾性壁の脳動脈瘤の血流の拍動に伴う膨張収縮形状を再現し、血行力学的因子である壁せん断力WSS、壁せん断力の空間勾配WSSGを正確に予測する実験を実施した。まず、最大の問題である薄膜弾性壁実寸Phantomの作製法を確立しつつ、このモデルをセットする最適な Bathを準備できた。さらに、拍動流量の高い再現性を確立し、粒子画像速度計PIVによる計測を実行し、流体構造連成解析による瘤内血流停滞、動脈瘤の進展・破裂の予測を実行した。今年度は、中大脳動脈瘤の中間面となる一面を取り出し、拍動に伴う瘤形状、WSSおよび瘤入口から瘤の底部に衝突する淀み点回りで、WSSの瘤壁に沿う勾配 (WSSG)が極めて大きくなることから、淀み点回りに作用する張力が破裂の一因になる可能性を見出した。同時にこの一面であるが、 弾性モデルの最大及び壁に沿う平均WSSは、何れも剛体モデルよりそれぞれ8%、3%減少することが示された。弾性壁動脈瘤では 流れの不安定性の指標である運動エネルギカスケードKEC (Kinetic Energy Cascade)が剛体壁の場合より低周波数で減衰の勾配が大きいことが見いだされつつあり、伸縮する瘤壁の弾性を考慮する必要がある。膨張収縮する薄壁弾性壁動脈瘤内流れに関する論文が Impact Factor のあるJournal of Applied Physics などの雑誌に3編掲載され、2編を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
A.この1年間は、この分野では脳動脈瘤壁厚1~1.2mmが国際的にも標準的であるが、本グループはシリコン壁厚 0.4mm程度までに到達する方法を、10回のDipping & 50℃の恒温槽で各8時間硬化し、多くの時間を要しこの厚みを確立している。この厚みは、世界最薄である。 B.確かに、薄膜弾性壁Phantomの作製に時間を要したが、2D-PIV による瘤中間面の形状、流体の流れ構造、WSS & WSSG、Flow Instabilityの測定から、弾性壁の瘤淀み点回りのWSSの減衰、WSSGがTensile Force に直接関連して作用する破裂につながる可能性、弾性壁ではKinetic Energy Cascade (KEC)は剛体モデルより減衰することが示された。CFDによる剛体壁では、瘤壁の低壁せん断応力の部位で血液の滞留留時間が長くなることが瘤破裂に至ることを解明した。 C.現在、Semi 3D-PIV 計測を実施する段取りをしており、これがなされれば伸縮する薄膜弾性壁動脈瘤内の半3次元的に流動を捉え、進展、破裂に至る概念を大きく転換する提案が可能となる。例えば、弾性壁はWSSを緩和するか?Tensile Force (WSSG)への影響は?Flow Instability の減衰率する可能性は?など、多くの課題を解決し、この分野で新しい概念を提供できる。同時に、上述の解明は弾性壁瘤のFSI解析で、弾性と剛体壁モデルを比較することにより、実験の妥当性を確立できる。 D. 瘤壁の弾性は、瘤壁が膨張収縮すれば変形が生じ、「WSSの抑制と、その空間微分であるWSSGの変化に伴う血管壁細胞間の引張収縮という効果、KECが減衰することが示唆され、瘤の進展・破裂に如何に関与するか」ということを解明した。
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Strategy for Future Research Activity |
現有のStereo PIV は、基本的に校正が難しく時間を要する。そこで、2D-PIV を使用し、瘤内の直交する2平面で測定を行い、semi 3D-PIV で測定を行う。基本的にsemi 3D-PIVにより、薄膜弾性壁動脈瘤の形状、WSS、WSSGに直接関連する張力、弾性によるFlow instability の減衰率、動脈瘤の破裂に至る RRT の評価など、新知見となる各種の物理量の解明を行う。焦点は、ヨウ化ナトリウムとグリセリン水溶液からなる作動流体、Phantom SiliconeとアクリルBathの屈折率を合致させ、さらに高感度のUV-Laserを光源とし、散乱粒子として希土類であるルミシス粒子を用いることである。さらに、一般に動脈瘤を持つ血管病変患者の血管は、 弾性係数が健常者の2~3倍になることを考慮して、代表者が確立した壁厚0.4 mm として、健常者の血管壁弾性率E= 0.7 MPaに加え、E= 1.0~3.0 MPa と変化させて、これらの現象を解明する。このPIV System により、流速、弾性壁形状を 同時に測定する。同時に、流体構造流体解析FSI し、これらの現象を解析することにより、実験と比較検討することにより、革新的な進歩につながる。これらの改善により、上述の弾性壁はWSSを緩和するか、Tensile Force (WSSG)への影響、Flow Instabilityを如何ほど減衰させられる可能性など、これまで剛体壁で行われてきた概念を根本的に見直すことが可能となる。
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