2023 Fiscal Year Research-status Report
大規模渦がもたらす突風環境における翼の非定常空力特性の解明
Project/Area Number |
22K03931
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
西尾 悠 東京理科大学, 工学部機械工学科, 助教 (70712743)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 流体工学 / 非定常空気力 / 超小型航空機 / 突風応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
小型かつ低速飛行中の翼が突風に晒された際の空力応答の解明に向けて風洞実験および数値シミュレーションを実施した。実験によるアプローチでは,マルチファンとシャッター機構を備えた小型突風風洞のシャッターの開閉角度やファンの出力を様々に変化させ,突風を模擬した非定常に加減速する主流や翼のスケールよりも大きな一様せん断流を作り出した。今年度は,突風や大規模なせん断流に晒された際の翼にかかる力および翼後流の速度分布を計測した。それによれば,失速角付近では,加速中は加速前後に比べて揚力係数が増大する一方,揚力係数の変動量は小さくなることがわかった。本実験では,主流が加減速することによる揚力係数の増加量は,定常主流の際のおよそ2倍程度であった。 数値シミュレーションでは,空気力の過渡応答と翼面上に形成されるはく離泡の関係について調査した。加減速主流のうち加速時には,はく離泡が縮小しながら翼の前縁近傍に定在する。その結果,揚力変動や試行ごとのばらつきが低下することが明らかとなった。そのため,風洞実験で見られた揚力変動の低下もこの現象が原因であることが推察される。また,主流の速度変化が完了し凪の状態になると,前縁に存在していた,はく離泡が過渡的に増大し,はく離再付着を繰り返すことがわかった。そのため,この現象により初年度に報告した強い過渡的な揚力変動が発生していることが明らかとなった。周期的な突風と孤立的な突風の両者に対する空力応答を比較したところ,孤立的な突風が3周期ほど連なると,周期的な突風と同じ応答になることがわかった。さらに,孤立的な突風の場合,風速が変化しているときの空気力変化は周期的な突風にさらされている翼よりも小さいことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,大規模渦に対する超小型航空機翼の空力応答の解明を目的として風洞実験および数値シミュレーションを遂行している。実験や数値シミュレーションから多くの事実が明らかとなっている。また,次年度の研究方針を確認する予備的な数値シミュレーションにも取り組んでいることから,研究の遂行自体は問題がないと考えている。一方で,研究代表者の異動などがあり,昨年度の目標の一つに掲げていた英文雑誌への論文投稿および掲載についての進捗状況が芳しくないため,総合的に判断し本研究課題の進捗としてはやや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的な翼形状を持つ翼型の突風応答については多くの事象が明らかになりつつあるため,今後は突風に対する応答の翼型依存性にも力を入れて調査してゆく。翼型を変えた調査は,実験よりも数値シミュレーションのほうが有利と考え,次年度は数値シミュレーションに重きをおいて進める。ただし,多数の翼型について計算格子を切り直してゆくと,計算コストがかかるため,そのコストが不要な直交格子と埋込み境界法を組み合わせて現象を再現可能か調査し,可能であればそのソルバーを用いて研究を進める。また,剥離泡と空気力との関係については,流れ場の特徴をより詳細に調べてゆき,剥離法の制御方法の手がかりを見るけることに尽力する。加えて英文雑誌への論文投稿により研究成果を広く公表することを目指す。
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Causes of Carryover |
英文誌への論文投稿が遅れているため,その校閲費用や投稿費用を次年度へ持ち越した。また,予定していた国際会議参加のための海外出張を取りやめ(円高のため予算不足であったから),国内出張としその差額を次年度の海外出張用に繰り越した。
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