2022 Fiscal Year Research-status Report
気泡停滞下における限界熱流束の解明および予測モデルの構築
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22K03972
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
網 健行 関西大学, システム理工学部, 准教授 (00581654)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 限界熱流束 / 下降流 |
Outline of Annual Research Achievements |
液体が管内を下向きに流れる下降流では,沸騰によって生成された気泡の浮力による上昇速度と液体の下降速度が釣り合う条件では,気泡が停滞する特殊な条件が生じる.伝熱面近傍で気泡が停滞し,伝熱面への液体の供給を阻害することで,局所的に空焚きの状態となり,伝熱が急激に劣化する限界熱流束の発生につながる恐れがある.沸騰関連機器の安全設計においては限界熱流束の発生機構の把握ならびに予測が必要となる.そこで,まずは上昇流と下降流におけるサブクール沸騰気泡挙動を把握するために,作動流体に水を用いた強制流動沸騰系における伝熱実験および気泡観察実験を行った.テストセクションは1面をステンレス伝熱面,残り3面を透明ポリカーボネートとする片面加熱矩形流路である.ハイスピードカメラを用いて気泡挙動を観察し,取得画像に対して画像処理を行うことで,気泡直径,気泡速度を取得した.結果より,上昇流の場合,気泡直径が大きくなるとともに気泡の上昇速度が増加する傾向を得た.一方,下降流の場合,多くの沸騰気泡が壁面に付着しているとともに,逆流する気泡を確認することができた.次に,従来の水を作動流体とする実験に対し,熱物性の影響を得るために,冷媒を作動流体とする強制流動沸騰ループを構築し,限界熱流束実験を行った.下降流の限界熱流束発生機構はテーラー波長を代表長さとして分類できると考え,実験条件下では,冷媒の表面張力が水の表面張力の値の7分の1程度となることを考慮し,管内径4 mmと8 mmを対象に実験を行った.管内径4 mmの場合,上昇流と下降流ともに,環状流液膜ドライアウトによると考えられる限界熱流束が発生し,質量流束の増加と伴に単調増加する傾向を示し,限界熱流束の値にあまり差は見られなかった.一方,管内径8 mmの場合,上昇流と下降流の限界熱流束は大きく異なる特性を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サブクール沸騰気泡挙動を確認するための片面加熱矩形流路を作製することができ,上昇流および下降流を対象に,実験を行うことができた.また,冷媒を作動流体とする沸騰ループを構築し,試運転を行うとともに,上昇流および下降流に対しまずは,管内径のことなる条件を対象に伝熱実験を行い,限界熱流束を得ることができた.以上の観点からおおむね当初の計画通り研究が進んでいるものと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
冷媒を作動流体とする沸騰ループが完成したことから,今後は,流量,管内径,加熱長さ,管姿勢など様々なパラメータを変化させた伝熱実験を行うことで,系統的な限界熱流束のデータ取得を行うとともに,限界熱流束予測モデルの構築を行う予定である.また,片面加熱矩形流路を用いたサブクール沸騰気泡挙動の観察においては,想定した熱流束は印加できたものの,片面加熱であることから投入熱量は小さく,また,ステンレス伝熱面の熱容量が大きいため,詳細な伝熱特性を得るには不適切であることが分かった.そこで今後は透明電極を蒸着させたFTOガラスを用いた流路を再構成し,伝熱実験および気泡観察実験を行う予定である.
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Causes of Carryover |
直接経費は,実験に使用する計測機器の購入および沸騰実験で使用する作動流体である冷媒の購入として計上しており,予算の残高が1回の冷媒購入金額を下回ったため,翌年度に繰り越した.次年度は,繰り越した次年度使用金額を合わせて,計測機器の購入ならびに冷媒の購入として使用する.
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