2022 Fiscal Year Research-status Report
A study on simulation method of transient response of grounding resistance of grounding net
Project/Area Number |
22K04055
|
Research Institution | Shonan Institute of Technology |
Principal Investigator |
関岡 昇三 湘南工科大学, 工学部, 教授 (60410031)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 接地抵抗 / 雷サージ / 電気回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
接地網などの大規模接地系の簡易かつ高精度な雷サージ解析モデルが求められている。土中における電磁界伝搬速度は空気中の光速の数分の1であり、接地極間における電磁界伝搬時間は接地抵抗過渡特性に大きな影響を与える。従来手法における電気回路論では導体間の電磁・静電誘導は相互インピーダンス・アドミッタンスとして模擬しており、導体間の誘導現象における伝搬時間を考慮していない。本研究では、電気回路論的手法に基づく伝搬時間を考慮した接地電極のシミュレーションモデルの開発を行う。開発したモデルは広く用いられている電力系統過渡現象解析プログラムEMTP(ElectroMagnetic Transients Program)において使用できるものとし、サージ解析の汎用性を図る。 令和4年度は棒電極などの小規模接地極からなる接地系を取り扱った。当初の計画では 接地モデル開発のための理論構築、接地モデル提案、EMTPソースコードの把握について実施予定であった。電気回路計算法として接点方程式がもっぱら採用されている。EMTPも接点方程式を採用している。EMTPの基本的な部分について独自にソースコードを作成した。さらに、土中の電界伝搬時間を考慮した方程式について整理を行い、接点方程式を用いる際の問題点を把握した。さらに問題点解決方法を新たに開発した。このように令和4年度研究計画について、埋設地線間の電磁・静電誘導結合の伝搬時間を考慮する手法の開発以外について全て実施することができた。 小型接地極の伝搬時間を考慮した接地抵抗提案モデルについてIEEE Transaction on Power Deliveryに論文“Grounding Resistance Model Considering Propagation Time between Grounding Electrodes”を投稿した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主に接地棒などの小型接地極について伝搬時間を考慮した接地抵抗モデル開発を行った。電流により大地電位上昇が決まるので、接地抵抗行列に伝搬時間を考慮し接地極流入電流を用いて大地電位上昇を求める必要がある。この手法では伝搬時間を考慮した計算が可能であるが、接点方程式を用いた回路解析法ではアドミッタンスを用いるため、抵抗行列の逆行列を求める際に行列式に伝搬時間を考慮した成分が含まれることから有効な計算手法でないことを明らかにした。そこで接地抵抗行列を自己接地抵抗行列と伝搬時間を含む相互接地抵抗行列からなる二つの成分に分解して考えることを提案した。前者は自己接地抵抗による電圧降下であり、後者は時間遅れが導入された他接地極からの誘導電圧を表している。これは自己接地抵抗と他接地極からの過去の履歴を表す電流から成り立ち、EMTPで用いられているDommel線路モデルと同様の模擬となっている。これによりEMTPのソースコードを修正することなく伝搬時間を考慮した接地抵抗過渡特性のシミュレーションが可能となる。接地極流入電流について理論値と提案モデルを用いた結果との比較を行い、提案モデルは理論値と良好に一致することを確かめ、提案モデルの検証を行った。 令和4年度の研究成果は令和5年電気学会全国大会において口頭発表するとともに令和5年度上期の二つの国際会議においても口頭発表することとした。さらにこれらをまとめてIEEE Transaction on Power Deliveryに論文“Grounding Resistance Model Considering Propagation Time between Grounding Electrodes”を投稿中である。これらによって当初の研究計画予定の項目について、ほぼ実施することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通りほぼ実施できたので研究計画に従って推進する。今後は伝搬時間を考慮した埋設地線モデルの開発、提案モデルのEMTPソースコードへの組み込みによる大規模接地系への適用、実験的検証、簡易式の導出を実施する。 過去の研究で埋設地線2条における誘導性結合および抵抗性結合は自己サージインピーダンス計算式および商用周波数接地抵抗計算式における電線半径を埋設地線間距離に置き換えることにより測定結果と計算結果が良好に一致することを確かめている(S.Sekioka, 他, “Simple formula for surge impedance of horizontal grounding conductor”, IEEE Trans. Electromagn. Compat., Vol. 63, No. 6, pp. 2065-2073, 2021)。研究課題は伝搬時間の模擬方法に絞られる。埋設地線は無損失線路と接地抵抗をその両端に分散させることにより模擬できることを明らかにしている(S.Sekioka, 他, “Approximate formulas for terminal voltages on the grounding conductor”, IEEE Trans. Electromagn. Compat., Vol. 56, No. 2, pp. 444-453, 2014)。埋設地線間における伝搬時間模擬は小規模接地極の模擬方法と同じ手法で模擬できると考えられ、接地抵抗における伝搬時間模擬方法についても同じであり、開発における大きな課題はないと考える。 接地網について、相互接地抵抗と自己接地抵抗から導出される定常接地抵抗の簡易式を検討し、どの程度の精度を有しているかについてついて検討を行う。開発したモデルは実験等により検証を行い、提案モデルの精度を確かめる。
|
Causes of Carryover |
測定器に使用する半導体生産が世界的に滞っており納期に遅れが生じている。そのため、支出が予定より遅れて今年度にずれてしまっている。今年度納入の見通しが立っており、今年度支出する
|