2022 Fiscal Year Research-status Report
グラファイト状窒化炭素の電子構造・化学構造とそのガスセンサ動作の相関性の解明
Project/Area Number |
22K04204
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
石黒 康志 東京電機大学, 工学部, 助教 (20833114)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | グラファイト状窒化炭素 / 水晶振動子マイクロバランス法 / 水素吸着 / ガスセンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
グラファイト状窒化炭素 (g-C3N4) 膜へ水素分子が吸着した際の電気伝導性変化を評価し、理論的にはg-C3N4上へ弱く吸着する水素分子が、電気伝導性にはほとんど影響を与えないことが分かった。そこで、水晶振動子上へg-C3N4膜を製膜し、水晶振動子マイクロバランス (QCM) 法により、g-C3N4膜への水素分子の吸着性評価に取り組んだ。g-C3N4を製膜していない水晶では、水素を導入しても水晶の共振周波数に変化は観測されなかったが、g-C3N4を製膜した水晶では、水素導入により共振周波数の変化が観測された。このことはg-C3N4と水素分子が何らかの相互作用をしていることを示している。水素導入を止めると、共振周波数は元に戻ることから、g-C3N4を製膜した水晶振動子が水素ガスセンサとして動作することが分かった。水素濃度を増加させると、共振周波数の変化量も線形に増加することも確認できた。水素導入によって水晶の共振周波数が増加していることから、g-C3N4膜へ水素が吸着後に、g-C3N4から何らかの元素が脱離して質量が軽くなっていることが示唆される。水素と同様に一酸化炭素 (CO) を用いても実験し、COの導入によっても水晶の共振周波数変化を確認できた。COを導入すると共振周波数が減少したことから、CO分子がg-C3N4上に吸着して質量が増加していることが考えられる。今後はこの水素およびCOの吸着・脱離のメカニズムを詳細に調べていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
g-C3N4上への水素分子の吸着について、電気伝導性変化からでは吸着を検知できないが、水晶振動子マイクロバランス (QCM) 法によって水素吸着を検知できることが分かった。また水晶の共振周波数変化の挙動から、水素分子は吸着後にg-C3N4から何らかの元素が脱離していることが分かった。現在は、この水素吸着・脱離のメカズムの解明に取り組んでいる。吸着前後のg-C3N4膜にX線光電子分光 (XPS) 測定から、水素を導入するとg-C3N4と反応後に窒素原子の脱離が起きていることが示唆される。今後は他の元素分析手法などでも水素吸着前後のg-C3N4の変化を調べて、メカニズムを考察する。進捗状況としてはおおむね当初の計画通りに進んでおり、2年目では吸着・脱離のメカニズムの解明、水素分子以外の一酸化炭素や二酸化炭素でも実験に取り組んでいく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、水素吸着・脱離のメカニズムを解明するために、水素吸着前後の化学組成変化を元素分析 (Elemental Analysis) で評価予定である。すでにX線光電子分光法 (XPS) でg-C3N4膜表面の化学組成変化は調べているが、元素分析によって膜全体の化学組成変化を評価する。またg-C3N4膜を介して出てきたガス成分をガスクロマトグラフで測定し、反応後のガス成分を調べる予定である。水素分子以外にも一酸化炭素や二酸化炭素でも同様にg-C3N4膜上への吸着・脱離挙動を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
購入した物品が当初の予定よりも安く入手できたため、若干の差額が生じた。
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