2022 Fiscal Year Research-status Report
コア促進膨張試験結果の物理的および化学的解釈に基づくASR診断法の確立
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22K04266
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐川 康貴 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10325508)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アルカリシリカ反応 / コア / アルカリラッピング / 膨張 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンクリート構造物にアルカリシリカ反応(以下,ASR)が発生した場合,コアを採取し,促進膨張試験を行うことが多いが,現在の試験法にはコアの乾燥や膨張量の過小評価といった課題が残っている。これまでの研究で,アルカリラッピング(以下,AW)が供試体の乾燥とアルカリ溶脱の抑制に有効であることが示されている。上記に対する解決策の一つとして,コアの促進膨張試験にもAWを適用することが考えられる。そこで,コンクリート柱部材を模擬したブロックからコアを採取し,そのコアを用いて促進膨張試験を行い,AWや寸法等がコアの膨張挙動に及ぼす影響を調べた。結果の概要を,以下に示す。 直径100mmのコアを用い,AWの有無の影響を比較した結果,AW無しでは,密閉容器内で湿状態空に保存しているのにも関わらず,初期にコア表面が乾燥し,その後も十分な水分の供給が無く,膨張率が過小評価された。よって,既往の代表的な手法である JCI-S-011-2017ではコアが乾燥してしまう問題があるが, AWによりこの問題を解決できることが明らかとなった。また,直径100mmと50mmのコアを比較した場合,直径50 mmの膨張率が大きくなった。これは,50mmの方が相対的に表面積が大きく,ASRの反応に必要な水分がコアに十分供給されたことが要因の一つとして考えられる。一方,材料の不均一性に起因すると考えられる膨張率の測定値のばらつきが認められた。AWを用いたコアの促進膨張試験はASRの膨張特性の把握には有効であることが結論付けられたが,寸法や鉄筋拘束の影響,さらには,AWのアルカリ濃度の設定方法については引き続き検討を重ねる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ASRが発生した構造物に行う試験の一つとして,JCI-S-011-2017があるが,この方法では,試験期間中のコアからのアルカリの溶出の影響を受けやすい,と言われているが,定性的な指摘にとどまっている。これに対して,今年度の研究の結果,コアの促進試験の結果,アルカリラッピングの有無による差が明らかとなった。促進試験により膨張率等の物理的特性を明らかにしたことは,当初の計画の通りであり,本研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ASRを生じる(あるいは,生じている)コンクリートから採取したコンクリートの物理的特性について,劣化進行段階が促進膨張率に及ぼす影響,鉄筋の拘束度が解放膨張率に及ぼす影響,コア採取方向の影響について調べるとともに,コア内部のひび割れの定量化に取り組む。また,化学的特性について,アルカリシリカゲルの生成や流出の状況の把握に取り組む。これらを通じて,アルカリ溶脱を抑制したコア促進試験方法の提案ならびにASR診断の精度向上に資する研究を行う。
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Causes of Carryover |
今年度(2022年度)コンクリートブロックからコア採取して促進膨張試験を予定していた一部のコアについては,コンクリートブロックの膨張率が当初想定していた膨張率および損傷度に達していなかったため,次年度(2023年度)にコア採取および関連の分析試験を見送った。最新の膨張率の測定の結果,次年度にコア採取を行える見込みになっているので,次年度分として請求し,研究を実施する。なお,本研究での3年間の全体工程に変更は無い。
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