2023 Fiscal Year Research-status Report
Effects of grading characteristics on soil ageing and its interpretation by viscous properties of soils
Project/Area Number |
22K04305
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
榎本 忠夫 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (70727180)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 年代効果 / 液状化強度 / 初期せん断弾性率 / 微小ひずみ領域におけるヤング率 / 三軸液状化試験 / 砂質土 / 均等係数 / 一次元圧縮試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は計画通り2系統の実験を行うとともに、当初計画にはなかった実験も実施した。 シリーズ1:珪砂とDLクレーを混合し細粒分含有率が15%で均等係数Ucが10~60程度になるように調整した3種類の試料を用いて、締固め度95%の供試体を作製し、土粒子間の固着に起因する年代効果を再現するため上載圧100kPaの下で50日間養生した。供試体を有効拘束圧100kPaにて等方圧密した後、微小ひずみ領域における剛性の測定と液状化試験を行った。その結果、いずれの試料においても、液状化強度や剛性に対する年代効果は確認されなかった。これは、供試体の締固め時に相当な過圧密履歴を与えたためかもしれない。 シリーズ2:土の骨格構造の発達に起因する年代効果に対する土質の影響を明らかにするため、シリーズ1と同様に作製した供試体に対して、軸ひずみ両振幅0.1%の排水繰返し載荷を250回加えた後、剛性の測定と液状化試験を実施した。その結果、Ucの増大に伴い液状化強度に対する年代効果は大きくなる傾向にあったが、剛性に対する年代効果は見られなかった。液状化履歴を与えた後の非排水せん断においては、Ucが大きいと大きなひずみ領域では年代効果の影響が残存している傾向が見られた。 シリーズ3:当初計画にはないが、シリーズ2で得られた剛性に関する実験結果のメカニズムを検討するため、一次元圧縮試験を行った。粒径の異なる5種類のガラスビーズ、2種類の礫を用いて、幅5cm、奥行5cm、高さ10cmの容器内に相対密度90%の供試体を作製した。上載圧400kPaにて圧密後、応力振幅300kPa(軸ひずみ両振幅0.1%相当)の繰返し載荷を1000回行った。当該繰返し載荷の前後には、微小ひずみ領域における鉛直ヤング率も評価した。その結果、繰返し載荷により生じる残留軸変位量が平均粒径の1/2程度以下では剛性に変化がないことが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は計画通り2系統の室内試験を行うことができ、また、当初計画にはなかった実験も実施したことで、多くの知見を得ることができた。 シリーズ1では、土粒子間の固着に起因する年代効果を再現するため、一次元圧密を50日間実施した供試体を用いて三軸液状化試験を行った。昨年度は、細粒分含有率の高い試料では通水時のコラプスの影響により供試体の年代効果が破壊された可能性があったため、今年度は高密度な供試体を作製するために特殊な締固め装置を製作した。しかし、供試体作製時の締固めにより相当な過圧密履歴を与えると、土粒子間の固着に起因する年代効果は短期間では発現されない可能性があることを明らかにした。 シリーズ2では、土の骨格構造の発達に起因する年代効果に対する土質の影響を調査した。その結果、均等係数が増加するにつれて液状化強度に対する年代効果が発現しやすい傾向にあったが、剛性に対しては年代効果が確認されなかった。剛性に関する結果は、異なる条件下で実施した昨年度の実験結果と同様であった。そこで、当初計画にはなかったが、シリーズ3として、シリーズ2で実施したような液状化試験前の多数の排水繰返し載荷による骨格構造の発達に関するメカニズムの解明を試みた。その結果、排水繰返し載荷により生じる不可逆的な軸変位量が平均粒径の1/2程度以下の場合は剛性が増加しないことが分かった。実際、昨年度の実験及び今年度のシリーズ2において実施した排水繰返し載荷により発生した残留軸変位量は最大でも平均粒径の1/4程度であった。したがって、シリーズ2と3の結果を総合すると、液状化強度と剛性に対する年代効果の発現メカニズムはお互いに異なっている可能性があると考えられる。この点については昨年度も指摘したが、今年度はより踏み込んだ形で検証が進んだ。 このように、実験は概ね計画通りに進み、学術的価値の高い成果を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、過年度と同様に珪砂とDLクレーを混合し様々な土質に変化させた試料を用いて供試体を作製し、所定の期間、一次元圧密の作用を与えた上で、微小ひずみ領域における剛性の測定とともに三軸液状化試験を行っていく。ただし、2023年度のシリーズ1の実験結果を踏まえて試験条件の変更を行う。また、効率的に年代効果を付与し実験を進めていくため、一次元圧密用の機器数を増やすことや供試体に少量のセメント等を添加することも検討する。本実験により、土粒子間の固着に起因する年代効果に対する土質の影響について更なる調査を行っていく。 さらに、年代効果の発現メカニズムの全体像を明らかにする上で重要であると考えられるため、当初計画にはなかったものの2022、2023年度に実施した土の骨格構造の発達に起因する年代効果に対する土質の影響も引き続き検討していくこととする。本調査においても、上記のように珪砂とDLクレーを混合し土質を変化させた試料を用いた三軸液状化試験を行う。当該試験では、排水繰返し載荷前後に微小ひずみ領域における剛性も測定し、2023年度のシリーズ3にて明らかにした結果等を基に、剛性に対する年代効果についても更なる検討を行う。 また、当初の計画通り、上記の2種類の年代効果を付与した供試体を用いて、載荷の途中でひずみ速度を急変する三軸圧縮試験を行うことで粘性特性を評価し、年代効果と粘性特性の相関関係を調査する。これにより、年代効果のメカニズムの一端を粘性特性の観点から解釈することを試みる。
|
Causes of Carryover |
2023年度の実験計画を遂行していくにあたって必要であり購入する予定であった物品の一部について、手間と時間を要するものの、自身の研究室にある既存の物品を改造し充当する方が本研究費をより効果的に使用できると判断した。その結果、次年度使用額が発生したものである。「今後の研究の推進方策」の欄に記載したように、2024年度は2022、2023年度の実験結果も踏まえて、一部の実験条件を変更したり当初計画にはなかった新たな実験も行っていく予定であり、それらを効率的に遂行していくために必要となる物品の購入に充てる。また、研究代表者の所属機関の変更に伴い、新たな環境下で本研究を推進していくにあたり必要となる物品の購入に充てる。
|