2022 Fiscal Year Research-status Report
物理・化学的なクロッギングが地盤の重金属等捕捉機能に及ぼす影響の解明
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22K04309
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 智大 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (80943612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 敦史 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (30598347)
勝見 武 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (60233764)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 透水係数 / 定水位透水試験 / 反応速度 / 電解質 / 自然由来重金属等 / 吸着層工法 / 低濃度汚染土 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画した2つのサブテーマについて、以下のような検討を行った。サブテーマ(1)「透水性能の不確実性が重金属等捕捉機能に及ぼす影響の評価」では、掘削土から溶出する物質の挙動評価を行った。具体的には2年目以降の実験系の確立を目的に、実際の建設工事で発生した頁岩と泥岩を対象にバッチ溶出実験し、自然由来のヒ素とホウ素の実験結果に対して1次反応速度論モデル式をフィッティングすることで、反応速度パラメータを取得した。また、公定法の振とう式バッチ溶出試験と、非振とう式試験の比較も実施し、非振とう式は既存のモデルに整合した一方、振とう式では整合しない結果が得られた。以上の結果から、破砕性を有する自然由来の土壌・岩石試料には振とう式試験は適さない可能性が示唆された。 サブテーマ(2)「吸着層の物理・化学的クロッギングが地盤の透水性に及ぼす影響の解明」では、吸着材を山砂に混合して吸着層を模擬した供試体について、蒸留水や塩化カルシウム溶液、水酸化第二鉄溶液を通水する定水位透水試験を実施した。特に、盛土では掘削土から高濃度でカルシウムや鉄などの電解質を含む浸透水が吸着層に流入する可能性があり、それらが吸着層の透水性に影響を及ぼすことで、重金属等の捕捉機能にも影響する可能性がある。そこで、吸着材として一般的な、カルシウム/マグネシウム系材料を山砂に混合し、濃度の異なる電解質を通水して透水係数の時間変化を評価した。その結果、蒸留水と塩化カルシウム溶液を通水した場合には10-5 m/s程度の透水係数が得られた一方で、水酸化第二鉄溶液を通水した場合には透水係数が2オーダーほど小さくなる結果が得られた。黄鉄鉱を含有する掘削土など、鉄イオンを含む浸透水の流入が見込まれる場合には、透水性の低下を考慮して盛土内に水を溜めないような構造とする必要性が示唆され、吸着層を含む盛土の構築に向けた重要な成果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は計画した2つのサブテーマについて、想定通りの進捗が得られた。サブテーマ(1)では、掘削土から溶出する物質の挙動評価を実施できており、2年目以降の透水試験実施に向けた試料の選定が進んだ。実際の建設工事で発生した頁岩と泥岩を対象にバッチ溶出試験を実施し、自然由来のヒ素とホウ素の実験結果に対して1次反応速度論モデル式をフィッティングすることで、反応速度パラメータを取得した。その結果、頁岩・泥岩試料からのヒ素の溶出は24時間程度で平衡に至ることが明らかになった。そこで、2年目以降は24時間以上の固液接触時間を確保した溶出試験によって抽出液を作成し、透水試験を実施する見込みである。 サブテーマ(2)「吸着層の物理・化学的クロッギングが地盤の透水性に及ぼす影響の解明」では、吸着材を山砂に混合して吸着層を模擬した供試体について、蒸留水や塩化カルシウム溶液、水酸化第二鉄溶液を通水する定水位透水試験を実施した。具体的には、吸着材として一般的なカルシウム/マグネシウム系材料を山砂に混合し、濃度の異なる電解質を通水し、透水係数の時間変化を評価した。その結果、蒸留水と塩化カルシウム溶液を通水した場合には10-5 m/s程度の透水係数が得られた一方で、水酸化第二鉄溶液を通水した場合には透水係数が2オーダーほど小さくなる結果が得られた。透水性能低下のメカニズム同定には至っていないものの、当初の予定通り、2年目以降にXRD分析やX線CT分析等を組み合わせることで精緻化を目指す。1年目の研究では、黄鉄鉱を含有する掘削土など、鉄に起因するイオンを含む浸透水の流入が見込まれる場合には、透水性の低下を考慮して盛土内に水を溜めないような構造とする必要性が示唆され、吸着層を含む盛土の構築に向けた重要な成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画で掲げた2つのサブテーマについて、今後の推進方策を記載する。1つめのサブテーマでは、1年目に実施したヒ素とホウ素の溶出試験結果を踏まえ、吸着試験・透水試験を実施する。具体的には、1年目の実験結果をもとに自然由来重金属等の抽出液を作成し、吸着材を非汚染土に添加して吸着層を模擬した供試体に通水することで、重金属等の捕捉機能と透水係数の経時変化を評価する。吸着材には高い吸着性能が確認されている、酸化マグネシウム、酸化鉄、層状複水酸化物を主成分とする材料を用いる。母材には実現場で入手しやすく締固め性能にも優れる山砂を使用する予定であり、粒度、混合比率、乾燥密度をパラメータとして透水係数の経時変化を測定しつつ、自然由来の重金属等のうち報告件数が多い、ヒ素を含む溶液を通水させることで吸着性能を評価する予定である。 2つめのサブテーマでは、1年目の試験結果を踏まえて、透水性能低下のメカニズム解明に向けた検討を行う。具体的には、透水試験前後の供試体の間隙構造の可視化、吸着材の流動と吸着性能の不均質性の評価を行う。吸着材の粒子密度の多くは、母材である土の粒子密度よりも大きいため、X線CT分析による吸着材の空間分布評価が可能と見込んでおり、1年目に実施した透水試験前後の供試体間隙の可視化、吸着材が流動する様子や、XRD分析による沈殿形成反応によって生じた化学的なクロッキングの様子を評価する。また、供試体を等間隔で分割し凍結乾燥させた後に、各分画の粒度分布を測定することで、吸着材の流動を調べる。さらに各分画について、ヒ素を対象にバッチ式吸着試験を行い、透水試験後に生じた吸着性能の不均質性を考察する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、初年度に比較的大きな土槽を手配し、2次元の浸透実験・透水試験を行う予定であった。しかしながら実際には、研究着手前の予備実験を通じて、1年目にはまず鉛直1次元の透水試験から開始して大型試験の条件を絞り込むことが必要との考えに至った。また合わせて、重金属等の溶出特性評価を先行して進めることで、2次元土槽試験を行う際の試験条件をより精緻に決定でき、実際の建設現場の環境に近い条件で土槽試験を行えることを鑑みて、初年度の実験については、当初予定よりも費用を要さない室内試験を実施した。2年目以降には、当初計画通り大型試験や、国際学会での研究成果発表を行う予定のため、2年目に請求した助成金と合わせて問題なく研究を遂行できると考える。
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Research Products
(13 results)