2022 Fiscal Year Research-status Report
砂州地形の撹乱を維持するための流砂の量的・質的管理と河川構造物の効果的配置
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22K04334
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
武藤 裕則 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (40263157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 浩 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (90452325)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 透過型水制 / 伝統的河川構造物 / 砂州地形 / 流砂 / 流れの3次元性 / 室内実験 / 数値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下,3種の実験を遂行した. 1.聖牛周辺の流れの3次元構造の解明:伝統的河川構造物であり透過型水制の1種である聖牛を対象に,流れに対する水制軸の角度を変化させ,聖牛周辺の流速及び乱れ強度分布を計測した.その結果,聖牛による流れの拡散域と収束域が生じていること,水制軸の角度の増加に伴い水はね効果が増すこと,聖牛後流部に乱れ強度の小さい領域が形成されることなどが明らかとなった. 2.透過型水制が周辺河床に与える影響:3種の水制工について,水制周辺の局所的な地形変化とそれに伴う流送土砂量の改変について移動床水路を用いた実験により検討した.その結果,ハイドロバリア水制,杭出し水制のいずれについても,平均年最大規模流量に対しては水制による縮流と後流域形成の影響が大きく,水制近傍に生じる局所洗掘を起因とする水みちの更なる発達により河道の二極化がより進行する傾向が伺えた.これに対して菱牛を砂州上に配置した場合,砂州を適度に変形させることで横断方向の比高を小さくすると共に,流砂と砂州本体の流動性を高めることも明らかとなった. 3.水制周辺の流砂・地形変動に寄与する平均流構造と乱れ特性計測:不透過型水制,石かご水制及び杭出し水制を水路に設置し,水没した状態において,構造物周辺の時間平均流速、乱れエネルギー及びレイノルズ応力の分布特性や,縦断・横断水面勾配の変化特性に着目した.その結果,構造物本体の透過性によって,せき上げ・水はね効果,背後渦の規模・位置と流れの混合特性等が異なることが明らかとなった. 加えて,研究対象河川である那賀川河口~10.4km区間における横断及びALB河床測量データを入手し河床変動計算の準備を行うと共に,構造物周辺の強い3次元流れを再現しうる数値モデルを構築し,構造物の透過性を考慮するモデルに関する検討を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に初年度の計画として記載していた「河道データの収集」についてはほぼ完了しており,出水履歴や河床材料の粒度構成など,計算の入力条件としてどこまで考慮するかについて検討を進めている. 「室内実験」については,計画調書に2年目の内容として記載した高水敷配置の影響についてほぼ検討を終了し,さらに3年目に予定していた水制配置による河床地形撹乱の影響についても検討に一部着手できた.加えて,その成果について年度後半に開催された国際会議で報告したところ,投稿論文が「Best Student Paper Award」を受賞し高く評価された. 「数値解析」については,設備備品費で要求した解析用コンピュータを購入し,管理者から入手した河床地形データの入力を行うと共に,透過型構造物特有の流況及び河床変動特性を再現するモデルの構築に着手している. 以上の内容は,当初の計画内容を先んじて進めており,また当初想定した成果の一部報告であるにもかかわらず学会からの評価も得られるなど,当初の計画を大きく上回る進展状況と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
「室内実験」については,初年度の検討で砂州地形の局所的撹乱と砂州の流動性向上に効果を発揮した,わが国伝統的河川工法である牛枠類について,さらにその配置条件を変化させたときの砂州及び水みち動態変化について検討する.具体的には,聖牛及び菱牛を対象に,その群数・列数を変化させると共に,水理条件についても低水~洪水規模までを対象とし,流況・流速分布・乱れ強度分布及び河床変動について計測する. 「数値解析」については,那賀川河口~10.4km区間を対象に,昭和30年代,40年代,昭和後期~平成初期及び平成後期について,各期における代表洪水ハイドログラフを与え,各年代の終期河床地形を再現するモデル調整を行った上で,各期間の代表的流下流砂量を評価する.さらに,ALB河床地形データが存在する平成後期について,室内実験結果も参照にしながら,水制の有無による流砂の流下状況の差違について検討する.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,研究打合せ(研究分担者旅費)及び成果発表(研究代表者・研究分担者旅費)が予定金額を下回ったほか,予定した謝金の使用がなかった. 次年度は,研究打合せに加えて,国際会議1件での発表が決定しているほか,国内会議数件への投稿を予定しており,次年度使用額については十分消化できる予定である.
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