2023 Fiscal Year Research-status Report
Artificial substrate for diversity restoration of stream benthic assemblages
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22K04340
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
斎藤 裕美 東海大学, 生物学部, 准教授 (50433454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
布川 雅典 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(寒地土木研究所), 主任研究員 (90389651)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 河床低下 / 底生動物群集 / 人工基質 / 露岩 / 多様性回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、河川の露岩化による劣化した底生動物群集の多様性を回復する人工河床技術を開発するため、2つの研究をおこなう。 Ⅰ.岩盤河床上と礫河床の底生動物群集の特性比較 Ⅱ.人工河床が底生動物群集に与える効果の持続性と人工河床の耐久性の検証 Ⅰでは、岩盤河床と礫河床に形成される底生動物群集の特徴を各々季節にて比較し、単純な構造の岩盤河床と複雑な構造の自然礫河床上に形成される基本的な底生動物群集の特徴を明らかにする。2022年度では、春、夏、秋と3回自然河床と岩盤河床と礫河床の底生動物の採集し、各々3基の帯工区間にて実施した。 Ⅱでは、2023年の春から、岩盤上に岩盤と同じ素材で作成した二つ(単純・複雑)の構造をもつ人工河床を設置し、人工河床の構造の複雑性が底生動物群集に与える効果を各季節ごとに検証した。さらに、2023年の春から、岩盤上での人工河床の効果と耐久性を検証するために設置した人工河床の耐久性を検証すし、残存する人工河床を回収し、1年間設置された人工河床の複雑性が底生動物群集へ与える効果を検証する。 現在、河川改修の際、生態系への機能を高める目的で様々なデザインの河床基質が設置されるが、その効果の持続期間を検証した研究はない。人工河床の機能は一過性のものではなく、長期間にて河川生態系を支える機能を持続するべきである。2022年から人工基質実験を開始するため、札幌軟石を加工する工場長と何度も検討し、人工河床を作成した。また、アンカーやボルトを用いて、人工河床を岩盤に固定する技術を確立した。2023年は、底生動物の採集、人工河床実験の実行、回収だけでなく、Ⅰ,Ⅱの底生動物の種同定をの分析を終えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年にて、研究Ⅰ.岩盤河床上と礫河床の底生動物群集の特性比較、研究Ⅱ.人工河床が底生動物群集に与える効果の持続性と人工河床の耐久性の検証研究において、Ⅰの採集は終えたが、種同定が進まず、再度行う必要があった。しかし、研究Ⅰでは、2023年の春、夏、秋に再度採集し、種同定をおこない、昨年の遅れを取り戻した。また、Ⅱの人工河床を用いた研究では、各季節(春、夏、秋、冬のみ河床の一部が滑りやすく危険な岩盤河床が凍結により危険になるため断念した)における人工河床の設置、回収し、種同定までの分析をおこなった。これにより、確実に人工河床実験をおこなうことが出来た。さらに、種同定後の底生動物の群集解析をおこない、岩盤河床と自然河床における底生動物群集の特徴を明らかにした。 結果にて、自然河床では底生動物群集の種多様性は春高く、夏、秋に従い低く値を示したが、岩盤河床では自然河床の約50%の種多様性であった。岩盤域に人工河床を設置し、単純な人工河床と複雑なものに構成された底生動物群集の季節変動を比較すると、夏にて種数が複雑な構造の人工河床上に高くなる傾向を示した。岩盤、自然河床上の底生動物と人工河床のものと比較すると、表面の構造に関わらず人工河床の底生動物群集は岩盤上のものと比べ種数は年間を通して高い値を示した。しかし、自然河床と比較すると夏と秋にて種数は近づくものの低い値を示した。個体数にて、人工河床上の底生動物群集は岩盤、自然河床のそれよりも低い値を示した。これは人工河床の設置期間が40日のため、底生動物の着底が自然状態のものと比べ、短かいと考えられる。優占種は、自然河床では礫を好む種が多かったが、岩盤および人工河床では双翅目のエリユスリカ亜科とヒメウスバガガンボ属が約90%を占める極端な群集構造を示し、大まかな分析を終えることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究Ⅱ「人工河床が底生動物群集に与える効果の持続性と人工河床の耐久性の検証研究において」の長期的(本研究では1年)な人工河床の長期的実験(季節感の実験は終わった)と耐久性の実験であるが、2023年の秋の突発的な洪水にて36基の人工河床中10基が流され、さらに春季の北海道の湧水における増水にて、人工河床は流されると推測される。申請者の怪我により医者から河川に入れないため、春の増水時の残存人工河床が数えられない状態ではあるが、目視では半数が流されているようである。元々、露岩域の札幌軟石は比重が他の礫よりも軽く柔らかいため、軟石を加工する職人から耐久性に問題が出る可能性があると指摘があった。人工河床の上流部が削れることはあっても、夏の増水でも欠損がなかったため耐久性はあると思えたが、秋の増水、春の融水による欠損を考えると耐久性は乏しいかもしれない。このように、欠損する理由と時期を本年度は調べる。また、本実験河床は、岩盤と同じ材質で作成されており、欠損しても自然河床の礫になる。そこで、可能であれば人工河床の欠損したものが礫として移動する距離を測定しておきたいと考えている。 本年度12月で開催されるイギリス生態学会への参加を予定していたが、河川や底生動物を用いてのより専門的な発表を考えると、アメリカ生態学会か、Society for Freshwater Science(より底生動物を研究する北アメリカとオーストラリア主催の学会)、台湾昆虫学会などの年次学会に発表を考えている。また、河川技術シンポジウムに論文として一部の結果を発表する。
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Causes of Carryover |
PCの値段が高騰したため、予定の機種が購入できなかった。また、群集解析のソフトウエアの扱っている会社がアメリカのようで、私立大学の生協では購入出来ていないため
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Research Products
(6 results)